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x402 vs UCP――AIエージェント決済の2大プロトコルが描く未来と、実運用に立ちはだかる壁

鈴木章広

鈴木章広

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2026/02/10

この記事のポイント

  1. Coinbaseのx402(HTTP 402ベースのステーブルコイン決済)とGoogle/ShopifyのUCP(商取引全体の標準化プロトコル)がAIエージェントコマースの基盤として台頭。両者は競合ではなく補完関係にある
  2. 技術的にはどちらも本番環境に対応可能だが、ボット検知・プロキシ・セッション管理といったインフラ層の課題が商用展開の最大のボトルネック
  3. EC事業者はUCP対応で「AIエージェントから発見される」準備を進めつつ、x402のマイクロペイメント基盤がAPI連携やB2B取引にどう影響するかを注視すべき

AIエージェント決済、2つのアプローチが激突

x402 vs UCP: What Challenges Lie Ahead for AI Agent Commerce? | HackerNoon

x402 vs UCP: What Challenges Lie Ahead for AI Agent Commerce? | HackerNoon

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UCP and x402 are two protocols shaping how AI agents buy things online. Here's how they work, where they differ, and why proxy infrastructure is the real need.

HackerNoonが報じた分析記事によると、AIエージェントがオンラインで商品やサービスを購入する時代に向けて、2つの主要プロトコルが形成されています。一つはGoogleとShopifyが共同開発した「UCP(Universal Commerce Protocol)」、もう一つはCoinbaseが開発した「x402」です。Adobeの調査ではAIプラットフォームからECサイトへのトラフィックが2025年に前年比4,700%増加し、Morgan Stanleyの推計ではエージェンティックコマースが2030年までに米国EC市場で1,900億〜3,850億ドルを占める可能性があると予測されています。

背景と業界動向

エージェンティックコマース――AIエージェントが消費者に代わって商品の発見・比較・購入を自律的に行う購買モデル――は、2026年の小売業界で最も注目される領域です。2026年1月のNRF(全米小売業協会)カンファレンスでGoogleのSundar Pichai CEOがUCPを発表し、Shopify、Target、Walmart、Visa、Mastercardなど20社以上が参加を表明しました。一方、Coinbaseは2025年5月にx402を公開し、同年9月にはCloudflareと共同でx402 Foundationを設立。Google Cloud、AWS、Anthropicもエコシステムに参加しています。

この動きの背景には、従来のAPI課金モデルの限界があります。サブスクリプション型の月額課金は、AIエージェントが1時間に数千件のマイクロトランザクションを実行する世界にはそぐわないものです。同時に、各EC事業者への個別API統合は拡張性に欠け、AIエージェントの普及を妨げています。UCPとx402は、それぞれ異なる角度からこの課題に取り組んでいます。

UCPとx402――設計思想の根本的な違い

UCP:商取引全体を標準化するフルスタックプロトコル

UCPは、商品の発見からカート構築、チェックアウト、返品・追跡まで、コマースの全ライフサイクルをカバーするオープンソースプロトコルです。TCP/IPに着想を得た多層アーキテクチャを採用し、コアの「Shopping Service」が基本的な取引プリミティブ(チェックアウトセッション、ラインアイテム、合計金額など)を定義します。その上にCheckout、Orders、Catalogなどの「Capabilities」が独立してバージョン管理される形で積み重なり、さらにフルフィルメントやロイヤルティなどの「Extensions」がドメイン固有の機能を追加します。

Shopifyのエンジニアリングチームの解説によると、マーチャントとエージェントはそれぞれプロファイルを公開して対応機能を宣言し、プロトコルが自動的にその共通部分を交渉します。トランスポートはREST、MCP(Model Context Protocol)、Agent-to-Agent(A2A)など複数をサポートし、決済はGoogle Pay、PayPal、クレジットカードなど既存の決済手段を使用します。

x402:HTTP層に決済を直接組み込むペイメントプロトコル

x402は、HTTPの「402 Payment Required」ステータスコードを活用した決済特化型プロトコルです。商取引のワークフローは扱わず、純粋に「リソースへのアクセスに対して対価を支払う」仕組みを提供します。

処理フローは明快です。エージェントが有料リソースをリクエストすると、サーバーがHTTP 402レスポンスで支払い条件を返します。エージェントのウォレットがUSDCトランザクションに署名し、支払い証明とともにリクエストを再送信。サーバーがオンチェーン決済を検証してアクセスを許可します。決済はBaseやSolana上で4〜8秒で完了し、プロトコル手数料はゼロです。

2025年12月までにx402は7,500万件のトランザクション、2,400万ドルの処理実績を記録しました。さらにV2アップグレードでは、マルチチェーン対応、プラグイン可能なファシリテーター、「Bazaar」ディスカバリーレイヤーなどが追加され、ACHやカードネットワークなどのレガシー決済レールとの互換性も備えています。

比較表:スコープと設計思想の違い

観点UCPx402
スコープコマース全ライフサイクル決済のみ
開発元Google / ShopifyCoinbase
決済手段Google Pay、PayPal、カード等USDC(オンチェーン)
決済速度変動(既存決済依存)4〜8秒
手数料標準的な処理手数料ゼロ
主な用途小売購買、エージェンティックチェックアウトAPI課金、マイクロペイメント、M2M決済
エコシステムShopify・Walmart・Target等20社以上Cloudflare・Google Cloud・AWS・Anthropic

重要なのは、この2つが競合関係ではなく補完関係にあるという点です。2026年2月8日には、UQPAYがUCPとx402の両方に対応した商用ステーブルコイン決済プラットフォームを発表し、従来型のマーチャント決済とAIエージェントによる自律決済を単一のインフラで処理できることを実証しています。

実運用の最大の壁――ボット検知とインフラの課題

HackerNoonの記事が指摘する核心的な課題は、プロトコル設計ではなくインフラ層にあります。両プロトコルとも技術的には本番環境に対応していますが、実際のマーチャントサイトに接続すると「ボット検知」という壁に直面します。

正当なAIエージェントの購買行為と、スクレイパーやクレデンシャルスタッフィング(認証情報の総当たり攻撃)などの悪意あるボットの行動を、マーチャント側が区別できないという問題です。データセンターIPからのアクセスはほぼ即座にブロックされ、トランザクション成功率は15〜25%に留まるとされています。

さらに、UCP・x402ともに複数のHTTPリクエストを順次実行する「セッション」が必要です。途中でIPアドレスが切り替わると、マーチャントはアカウント乗っ取りと判断してフラグを立てます。UCPの小売トランザクションでは10〜30分、x402のマイクロペイメントでも5〜10分のセッション維持が必要とされ、この「スティッキーセッション」の確保が実運用上の大きな技術課題となっています。

EC事業者への影響と活用法

UCP対応の準備を最優先に進めるべきです。 Shopifyマーチャントであればプラットフォーム経由でUCPが自動的に有効化される見込みですが、独自ECを運営している場合はAPI対応やMCPサーバーの構築が必要になります。ucp.devで公開されている仕様書を確認し、まずは商品カタログの構造化データ整備から着手することが推奨されます。

x402はAPI提供事業者やB2B取引に注目すべきです。 自社でAPIやデジタルコンテンツを提供している場合、x402によるペイパーリクエスト課金は新たな収益モデルになり得ます。特にCloudflareが「pay per crawl」機能としてx402を統合しているように、AIエージェントからのデータアクセスを直接収益化する仕組みが整いつつあります。

ボット対策の再設計も急務です。 従来の「すべての自動アクセスをブロックする」アプローチは、エージェンティックコマース時代には機会損失に直結します。正当なAIエージェントを識別・許可するための認証メカニズムやアクセスポリシーの整備が必要です。

まとめ

UCPとx402は、AIエージェントコマースという同じ目標に向けて異なるレイヤーを担う補完的なプロトコルです。UCPが「AIエージェントが何を買うか」のワークフロー全体を標準化し、x402が「AIエージェントがどう支払うか」の決済レイヤーを担います。UQPAYの統合プラットフォーム発表は、この2つが将来的に一つのスタックとして機能する可能性を示唆しています。

しかし、1,900億〜3,850億ドルとされる市場機会を制約しているのはプロトコルの設計ではなく、ボット検知・セッション管理・認証といったインフラ層の課題です。今後注目すべきは、UCP V2のロードマップに含まれるマルチアイテムカートやロイヤルティプログラム統合の進捗、x402 V2のマルチチェーン展開とレガシー決済レールとの統合状況、そしてCloudflareやGoogle Cloudといったインフラ事業者が「エージェント認証」の標準化にどう取り組むかです。プロトコルの選択よりも、その上に構築するインフラの品質が、エージェンティックコマースの成否を分けることになるでしょう。

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