ShopifyがGoogle・Microsoft両陣営とエージェンティックコマースで提携、全方位戦略を展開
鈴木章広
Twitter
Source: www.shopify.com
この記事のポイント
- ShopifyがGoogleのUCPを共同開発しMicrosoft Copilot Checkoutにも連携
- ECプラットフォームとして「どのAIでも買える」環境を構築
- Shopify加盟店は自動登録され、追加対応なしでAIコマース参入可能
NRF 2026でShopifyが全方位戦略を発表

The agentic commerce platform: Shopify connects any merchant to every AI conversation
Shopify now enables native commerce at scale across all major AI channels and built an open standard, co-developed with Google.
2026年1月11日、米国で開催されたNRF 2026(全米小売業協会年次総会)において、Shopifyが大きな動きを見せました。GoogleのUniversal Commerce Protocol(UCP)の共同開発に参加すると同時に、Microsoft Copilot Checkoutとの連携も発表。ECプラットフォームとして「どのAIでも買える」環境の構築に向け、両陣営との協業を同時に進める全方位戦略を明らかにしました。
この発表は、OpenAIのInstant Checkout、GoogleのUCP、MicrosoftのCopilot Checkoutと、主要テック企業がエージェンティックコマースへ参入する中で、プラットフォーム事業者としてShopifyがどのような立ち位置を取るかを示すものとなっています。
背景と業界動向
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが商品検索から購入完了までを代行する次世代EC体験です。McKinseyの予測によれば、2030年までに3〜5兆ドル規模の市場に成長する可能性があります。
2025年後半から2026年初頭にかけて、主要テック企業が相次いでこの領域に参入しました。OpenAIは2025年9月にInstant Checkoutを発表。Googleは2026年1月にUCPを、MicrosoftはCopilot Checkoutをそれぞれ発表しています。
この急速な動きの中で、ECプラットフォームは「どのAIに対応するか」という選択を迫られる状況になりつつありました。Shopifyの今回の発表は、その問いに対する一つの解答といえます。
Universal Commerce Protocol(UCP)の共同開発
UCPは、AIエージェントが商品検索から購入、購入後サポートまでの全購買プロセスを実行するためのオープンスタンダードです。ShopifyはGoogleと共同で開発を進め、Etsy、Wayfair、Target、Walmartなども参加しています。
20社以上の企業がUCPを支持しており、Adyen、Mastercard、Visa、American Express、Stripe、Best Buy、Macy's、The Home Depot、Flipkart、Zalandoなど、決済・小売の主要プレイヤーが名を連ねています。
UCPの技術的な特徴は以下の3点です。
柔軟なアーキテクチャ: REST、Model Context Protocol(MCP)、Agent Payments Protocol(AP2)、Agent2Agent(A2A)など、複数のプロトコルに対応。事業者の既存システムに合わせた実装が可能です。
段階的な導入: 必要な機能だけを選択して実装できる「Capabilities」モデルを採用。ディスカウントコード、ロイヤリティ連携、サブスクリプション対応などを個別に追加できます。
マーチャントの自立性維持: 販売者が引き続き「売り手」として記録され、顧客との関係性を維持。AIプラットフォームに依存しない構造になっています。
Shopifyの加盟店は、Google検索のAI ModeやGeminiアプリ内で直接商品を販売できるようになります。この機能は「まもなくロールアウト予定」とされています。
Microsoft Copilot Checkoutとの連携
Shopifyは同時に、Microsoft Copilot Checkoutとの連携も発表しました。Copilot Checkoutは、BingやMSN、Edgeといったマイクロソフトの各サービス上で、会話中に商品を購入できる機能です。
Shopify加盟店にとって重要なのは、「自動登録」という仕組みです。Copilot Checkoutには、Shopify加盟店が自動的に登録されます。オプトアウト(登録解除)は可能ですが、特別な設定をしなくてもAIコマースに参入できる状態になります。
決済はPayPal、Stripe、Shopifyが処理を担当。米国のCopilot.comから順次展開が始まっており、Etsy出店者、Urban Outfitters、Anthropologie、Ashley Furnitureなどが初期パートナーとして参加しています。
「Agenticプラン」による非Shopify事業者への開放
今回の発表でもう一つ注目すべきは、「Agenticプラン」の導入です。これにより、Shopifyを利用していない事業者も、Shopify Catalogに商品を登録し、ChatGPT、Microsoft Copilot、Shopアプリ経由で販売できるようになります。
これは、ShopifyがECプラットフォームから「AIコマースのインフラ」へと進化しようとしていることを示しています。
EC事業者への影響と活用法
Shopify加盟店: 特別な対応は不要です。Google側の機能が順次ロールアウトされ、Copilot Checkoutは自動登録されます。現時点では米国が先行ですが、グローバル展開が予定されています。
日本のEC事業者への示唆: 日本市場への展開時期は未発表ですが、Shopifyを利用している日本の事業者は、インフラ側の対応が完了すれば追加開発なしでAIコマースに参入できる可能性があります。
競合プラットフォーム(BASE、STORESなど)との差別化: 現時点で、Google UCPやCopilot Checkoutとの連携を発表している日本のECプラットフォームはありません。Shopifyの全方位戦略は、他プラットフォームとの明確な差別化要因になりえます。
注意点: エージェンティックコマースはまだ黎明期です。IABの調査によれば、AI推薦を完全に信頼する消費者は46%にとどまります。また、ChannelEngineの調査ではAIに購入を任せることに抵抗がない消費者は17%という結果も出ています。消費者の信頼醸成には時間がかかる可能性があります。
まとめ
Shopifyの今回の発表は、「特定のAIに賭けるのではなく、全てのAIで買える」というプラットフォーム戦略を明確にしたものです。
Google UCPの共同開発参加とMicrosoft Copilot Checkoutへの自動連携により、Shopify加盟店は複数のAIエコシステムに同時にアクセスできるようになります。さらにAgenticプランにより、非Shopify事業者への門戸も開放されました。
今後注目すべきは、以下の3点です。
- 日本市場への展開時期: UCPとCopilot Checkoutの国際展開スケジュール
- 消費者の受容度: AIによる購入代行がどこまで浸透するか
- 競合プラットフォームの動向: BASE、STORESなど日本のプラットフォームがどう対応するか
エージェンティックコマースの本格普及には数年かかる可能性がありますが、インフラ整備は着実に進んでいます。EC事業者は、今のうちから動向を注視しておくべきでしょう。
関連記事

エージェンティックコマースとは?AIが購買を代行する新時代を解説
エージェンティックコマースの全貌を解説。AIエージェントがユーザーに代わって商品選定から決済までを自律的に実行。AI経由トラフィック4,700%増、ウォルマートの20%がChatGPT経由という衝撃のデータと共に、企業が今すぐ始めるべき3つの準備ステップを紹介します。

Walmartが描くエージェンティックコマースの未来像 - 4つの柱と「スクロールしない買い物」
WalmartがAI主導のエージェンティックコマース戦略を本格始動。Google・OpenAIとの提携で会話型ショッピングの業界標準を狙い、「実用性・パーソナライゼーション・没入感・先回り」の4本柱を掲げる。

Amazonがウォルマート型「スーパーセンター」計画を発表、シカゴ郊外に22万平方フィートの大型店舗を建設へ
Amazonがイリノイ州オーランドパークに229,000平方フィートの大型店舗計画を発表。ウォルマート・スーパーセンターを上回る規模で食料品と一般商品を販売。

