commercetoolsが「AgenticLift」を発表、既存システムを維持したままエージェンティックコマースを導入可能に
鈴木章広
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Source: www.digitalcommerce360.com
この記事のポイント
- commercetoolsがスタンドアロン型エージェンティックコマース製品「AgenticLift」を発表
- 既存ECプラットフォームを入れ替えずにAIショッピング対応が可能に
- EC事業者は段階的なAI対応でChatGPTやGemini経由の購入に対応すべき
commercetoolsが新製品「AgenticLift」を発表

commercetools introduces standalone agentic commerce
Ecommerce platform developer and service provider commercetools is rolling out AgenticLift, a standalone agentic commerce product.
2026年1月21日、ドイツ発のコマースプラットフォーム企業commercetoolsは、新製品「AgenticLift」を正式発表しました。AgenticLiftは、企業が既存のECシステムを入れ替えることなく、AIエージェント経由での商品発見から購入までの一連の流れを実現できるスタンドアロン型ソリューションです。
commercetoolsの創業者でチーフイノベーションオフィサーのDirk Hoerig氏は「AIが購買の意思決定の場所と方法を変えつつあります。企業は何年も先ではなく、今日から参加する方法を必要としています。AgenticLiftは、既存システムを混乱させることなく、新たな収益を獲得し、スタックを近代化するための、より速く柔軟な道を提供します」とコメントしています。
背景と業界動向
2026年は「エージェンティックコマース元年」と呼ばれています。エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって商品を発見し、比較検討し、購入を実行する新しい購買体験です。従来の「検索→比較→購入」という断続的なステップから、AIが意図を理解して一連の流れで処理する連続的な購買体験へと進化しています。
Morgan Stanleyの予測によると、2030年までにオンラインショッパーの約半数がAIショッピングエージェントを利用し、支出の約25%を占めるようになるとされています。また、現時点でも米国消費者の半数以上が商品発見にAIツールを使用しており、生成AIトラフィックの35%以上が従来の検索を置き換えつつあります。
こうした中、ChatGPT、Google Gemini、Microsoft CopilotといったAIプラットフォームが主要な商品発見チャネルとなり、小売企業はこれらの環境での「発見可能性」と「購入可能性」の確保を迫られています。しかし多くの企業は、レガシーアーキテクチャや競合する優先事項、新興AI規格の乱立により、対応に苦慮しているのが現状です。
AgenticLiftの機能と特徴
AgenticLiftは、commercetoolsのエンタープライズグレード基盤の上に構築されており、以下の機能を提供します。
主な機能:- AIエージェント経由での商品発見、カート構築、チェックアウトフローの統合
- Google Gemini、OpenAI ChatGPT、Microsoft Copilotなど複数のAIプラットフォームへの対応
- 企業向けのガバナンス、コンプライアンス管理、リアルタイムデータアクセス機能
- Model Context Protocol(MCP)およびStripeのエージェンティックコマースプロトコル(ACP)のサポート
AgenticLiftの最大の特徴は、既存のECプラットフォームを完全に入れ替える必要がない点です。自社開発システムやレガシーシステムを運用している企業でも、AIを活用した商品発見と購入フローを追加で統合できます。これにより、企業は自社のペースで近代化を進めながら、今すぐエージェンティックコマースを導入できます。
先行事例:JD Sportsの取り組み
AgenticLiftの発表に先立ち、commercetoolsは2026年1月12日のNRF 2026で、英国の大手スポーツリテーラーJD Sports Fashionがエージェンティックコマースを導入したことを発表しています。
JD Sportsは、commercetoolsのAI HubとStripeのエージェンティックコマーススイート(ACS)を組み合わせ、米国の顧客がChatGPT、Microsoft Copilot、Google Gemini内で直接スニーカーを検索・購入できる仕組みを実現しました。顧客はAIチャットボットに「このシューズをカートに追加して」と伝えるだけで、ワンクリックで購入を完了できます。
JD Sports Fashionのグループ最高経営責任者Regis Schultz氏は「この契約により、JDはAIコマースの最前線に立つことになります。購買の意思決定が行われる場所で顧客にリーチし、購入を簡単に完了できるようにしたいのです」と述べています。
EC事業者への影響と活用法
AgenticLiftは、特に以下のような企業にとって有力な選択肢となります。
対象となる企業:- 既存のECプラットフォームを運用中で、すぐにリプラットフォームできない企業
- 自社開発システムやレガシーシステムを持つ大企業
- AIショッピング対応を段階的に進めたい小売・製造・流通企業
- フルリプラットフォームなしでAIチャネルに対応可能
- 商品データ、価格、在庫情報をAIチャネル全体で同期
- MCP・ACPなど業界標準プロトコルへの対応で将来性を確保
現時点でAgenticLiftは即時利用可能ですが、具体的な価格体系は公開されていません。導入を検討する企業は、commercetoolsに直接問い合わせる必要があります。
まとめ
commercetoolsのAgenticLift発表は、エージェンティックコマース市場における重要なマイルストーンです。これまでAIショッピング対応には大規模なシステム刷新が必要と考えられていましたが、AgenticLiftはその障壁を大幅に下げる可能性を示しています。
今後注目すべきは、StripeのACPやGoogleのUniversal Commerce Protocol(UCP)など、エージェンティックコマースの標準化の動きです。UCPはShopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartとの協力で開発され、Mastercard、Visa、Adyenなど決済大手も支持を表明しています。こうした標準化が進むことで、EC事業者にとってAIショッピング対応の選択肢はさらに広がっていくでしょう。
EC事業者は、自社のシステム状況と顧客のAI利用動向を踏まえ、段階的なエージェンティックコマース対応の計画を立てることが重要です。
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