Checkout.com、決済インフラ企業がエージェンティックコマースに戦略フォーカスする理由
鈴木章広
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Source: www.checkout.com
この記事のポイント
- Checkout.comがOpenAI支援のAgentic Commerce Protocolを採用しAI決済基盤を構築
- 消費者の47%がAIエージェントによる買い物を受け入れ、2026年が転換点に
- EC事業者は決済インフラとAI対応の両面から戦略的準備が必要
Checkout.comがエージェンティックコマースに注力する背景
Mastercard x Checkout: A discussion on agentic commerce
Pablo Fourez, Chief Digital Officer at Mastercard, sat down with Checkout.com to unpack the tech behind Agent Pay and the future of agentic commerce.
英国発の決済インフラ企業Checkout.comが、AIエージェントによる自律的な商取引「エージェンティックコマース」への戦略的シフトを加速させています。2025年11月、同社はOpenAIが支援する「Agentic Commerce Protocol(ACP)」の採用を発表しました。このプロトコルにより、AIエージェントがChatGPT内で商品の発見・選択・購入を消費者に代わって完結できるようになります。
Checkout.comのChief Product OfficerであるMeron Colbeci氏は「成功は、エコシステム全体にわたる深い信頼に基づくコラボレーションに依存する」と述べています。同社はVisa、Mastercard、Googleとも連携し、安全でトークン化されたインテリジェント決済のグローバル標準の確立を目指しています。
消費者調査が示す47%の受容姿勢
Checkout.comが2025年9月に英米4,000人を対象に実施した調査「Peak Season '25: The debut of agentic commerce?」は、エージェンティックコマースの消費者受容度を明らかにしました。
主要な調査結果は以下の通りです。
- 47%の消費者が2025年クリスマスショッピングにAIエージェントを利用する意向を示しています
- 72%のミレニアル世代(25-34歳)がAIエージェントによる購買を許容しています
- 47%が「退屈な」反復的購買をAIエージェントに任せたいと回答しています
- 21%の25-34歳が週次の食料品購入をAIエージェントに委ねる意向を持っています
Checkout.comのCMO、Rory O'Neill氏は「今年のクリスマスは、エージェンティックAIが日常的なショッピング行動の一部となる最初のカレンダー上の瞬間になるかもしれません」と述べています。
同社の予測では、5年以内にエージェンティックコマースが月間家計支出の約21%を占める可能性があるとしています。
業界大手の動向:Visa、Mastercard、FISの参入
Visaの取り組み
Visaは2025年12月、パートナー企業との連携により数百件のAIエージェント起動取引を完了したことを発表しました。同社APACプロダクト・ソリューション責任者のT.R. Ramachandran氏は、商用レベルでのAIエージェント取引が2026年第1四半期にも開始される可能性を示唆しています。
Visaは2025年10月に「Trusted Agent Protocol」を発表しました。これは悪意あるボットと正規のAIエージェントを識別するためのオープンフレームワークで、100社以上のグローバルパートナーと連携しています。同社は2026年ホリデーシーズンまでに数百万人の消費者がAIエージェントを利用すると予測しています。
Mastercardの動き
Mastercardは「Agent Pay」プログラムを2025年4月に立ち上げました。このプログラムは以下の4つの柱で構成されています。
- Agentic Tokens - 実際のカード番号を暗号化されたトークンに置き換えます
- Know Your Agent(KYA) - 信頼できるエージェントのみが決済にアクセスできる登録プロトコルです
- 認証 - 生体認証やパスキーによるカード保有者の同意確認を行います
- 標準化 - MCPサーバー標準によりエージェントへの安全なAPI公開を実現します
MastercardのCDO、Pablo Fourez氏は「これはモバイル決済と同じくらい大きな変化です」と述べ、パラダイムシフトの規模を強調しています。
FISの参入
FISは2026年1月12日、銀行向けエージェンティックコマースプラットフォームを発表しました。このプラットフォームはVisaとMastercardとの提携のもと、Q1 2026末までに全FIS発行銀行向けに提供開始される予定です。
主な機能は以下の通りです。
- Know Your Agent(KYA)データとカード詳細のセキュアな利用
- チャージバックの削減と取引承認率の向上
- 不正検知と顧客サービスの統合
市場規模予測:2030年に最大5兆ドル
複数の調査機関がエージェンティックコマース市場の急成長を予測しています。
McKinseyの予測
McKinseyは2030年までに米国B2C小売市場だけで9,000億~1兆ドルのオーケストレーション収益機会があると見込んでいます。グローバルでは3兆~5兆ドル規模に達する可能性があります。
Bain & Companyの予測
Bainは2030年までに米国エージェンティックコマース市場が3,000億~5,000億ドル規模に達し、Eコマース全体の15~25%を占めると予測しています。
決済インフラ企業が戦略フォーカスする3つの理由
次のコマースパラダイムを先行獲得する狙い
MastercardのSandeep Malhotra氏(アジア太平洋コア決済担当EVP)は次のように述べています。「決済の大きな変化は、主に実店舗の世界からEコマースの世界に移行したときに起きました。今、私たちは次の変化を目の当たりにしています。それはEコマースの世界からエージェンティックコマースの世界への移行です」
決済インフラ企業にとって、このパラダイムシフトの初期段階で標準策定に関与することは、将来の市場ポジションを確保する上で極めて重要です。
セキュリティとトラストの担い手としての役割
AIエージェントが自律的に取引を行う世界では、エージェンティック決済ネットワークが持つ以下の能力が不可欠になります。
- トークン化技術による安全な決済処理
- 不正検知とリスク管理の高度化
- エージェント認証と取引の正当性確認
Visaの「Trusted Agent Protocol」やMastercardの「Agent Pay」は、まさにこの役割を担うために設計されています。
新たな収益源としてのエージェント取引
消費者の47%がAIエージェントへの購買委任を受け入れている現状は、決済インフラ企業にとって新たなトランザクション収益の源泉を意味します。エージェントによる取引は、従来のEコマース取引とは異なるデータポイントと価値提供の機会を生み出します。
EC事業者への影響と活用法
今すぐ始めるべき準備
Checkout.comの分析によると、EC事業者には2つのアプローチがあります。
パッシブアプローチ- 既存ストアをAIエージェントが発見しやすいよう最適化します
- 明確で構造化された商品データを整備します
- リアルタイム在庫システムを導入します
- 専用のエージェンティックコマースプラットフォームと統合します
- AI対応APIを実装します
- データ保護と支出制限に関する透明性のあるポリシーを策定します
タイムライン
- 2026年Q1 - Visa、FISが商用サービスを開始する見込みです
- 2026年Q2 - Mastercardがラテンアメリカ・カリブでAgent Payを展開します
- 2026年ホリデーシーズン - Visaは数百万人がAIエージェントで購入すると予測しています
まとめ
Checkout.comをはじめとする決済インフラ企業がエージェンティックコマースに戦略フォーカスする理由は明確です。消費者の受容姿勢は急速に高まっており、2026年が本格的な転換点になると見込まれています。
EC事業者にとって重要なのは、この変化を単なるテクノロジートレンドとしてではなく、コマースの根本的なパラダイムシフトとして捉えることです。決済インフラとAI対応の両面から、今から戦略的準備を進めることが求められています。
McKinseyやBainの予測が示すように、2030年には数兆ドル規模の市場が形成される可能性があります。このパラダイムシフトに早期に対応した事業者が、次世代のコマースにおいて競争優位を獲得することになります。
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