OpenAIがChatGPT経由の購入に4%手数料を設定、AIコマースの新たな収益モデルが始動
鈴木章広
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Source: channelx.world
この記事のポイント
- OpenAIがChatGPT Instant Checkout経由の販売に4%の手数料を1月26日から適用
- Amazonの15%紹介料と比較して大幅に低コスト、AIコマースがマーケットプレイス経済を変革
- EC事業者は新たな販売チャネルとして早期参入を検討すべき段階に
OpenAIが新たな収益化モデルを発表

OpenAI's 4% ChatGPT checkout fee signals a shift in agentic commerce
Shopify will enable merchants to sell through AI chatbots, with OpenAI charging a 4% fee on sales made via ChatGPT Instant Checkout.
OpenAIは2026年1月26日より、ChatGPT Instant Checkout機能を通じた販売に対して4%の手数料を徴収することを発表しました。この手数料は、Shopifyマーチャントが既に支払っている標準的な決済手数料(約2.9%)に上乗せされる形となります。The Informationが最初に報じたこのニュースは、AIプラットフォームがECの収益構造に本格的に参入する転換点として注目を集めています。
対象となるのは米国のShopifyマーチャント100万店舗以上で、Glossier、SKIMS、Spanx、Vuoriなどの有名ブランドも含まれます。一方、Etsy売り手向けには既にサービスが開始されており、米国のChatGPT Plus、Pro、無料ユーザーが利用可能です。
業界動向
AIを活用したコマース、いわゆる「エージェンティックコマース」の台頭は、2025年から急速に進んでいます。Shopify会長Harley Finkelstein氏によると、AI駆動のトラフィックは前年比で7倍に増加し、AI検索経由の注文は11倍に急増しました。この成長率は、従来の検索エンジン経由のトラフィック増加を大きく上回っています。
OpenAIがこのタイミングで手数料モデルを導入した背景には、同社の財務状況があります。月間約4億ドルの赤字(バーンレート)を抱えるOpenAIにとって、収益源の多様化は急務です。チャットインターフェース上での購買完結は、広告収入に依存しない新たなマネタイズ手法として期待されています。
従来のマーケットプレイスと比較した手数料構造
Marketplace Pulseの分析によると、ChatGPTの4%手数料は既存のマーケットプレイスと比較して競争力のある水準です。
主要プラットフォームの手数料比較:- ChatGPT + Shopify: 4% + 2.9% = 約7%
- Amazon: 15%紹介料 + 広告費用で実質25-30%
- Walmart: 6-15%(有料検索配置が実質必須)
- TikTok Shop: 8% + コンテンツ制作コスト
- Etsy: 6.5%
年間売上100万ドルの事業者で試算すると、ChatGPT経由では約6万9,000ドルの手数料に対し、Amazon経由では15万〜30万ドルのコストがかかります。Azoma.aiはこの価格設定を「Amazonの8-15%紹介料と比較すればバーゲン」と評価しています。
さらに重要な点として、ChatGPTは「広告が回答内容に影響を与えることはなく、常に明確にラベル付けされている」と明言しています。Amazonでは2024年に出品者が562億ドルを広告に費やしており、スポンサー商品がオーガニック検索結果を圧倒している現状とは対照的です。
Agentic Commerce Protocolの技術的特徴
OpenAIは今回のサービスを支える技術基盤として「Agentic Commerce Protocol」をオープンソースで公開しています。Shopify公式発表によると、このプロトコルはStripeと共同で構築され、以下の特徴を持ちます。
主な機能:- 会話の中での商品発見、比較、購入の完結
- リアルタイムの商品データ(価格、在庫、バリエーション)連携
- マーチャントが顧客関係と販売記録を維持
- 標準のチェックアウトとInstant Checkoutの選択可能
マーチャントは自動登録ではなく、オプトイン方式で参加します。また、ChatGPT、Google AI Mode、Microsoft Copilotなど各AIプラットフォームへの参加を個別に選択できます。注目すべき点として、Google AI ModeやMicrosoft Copilotは現時点で追加手数料を設定していません。
EC事業者への影響と活用法
この新しい販売チャネルは、EC事業者に複数の選択肢を提供します。
メリット:- 従来のマーケットプレイスより低い手数料率
- 広告費用なしでの商品発見機会
- 顧客データと関係性の維持
- コンバージョン率の向上(Adobeデータでは約30%向上)
- 手数料4%はShopify標準手数料に追加される点を理解する
- オプトイン設定のため能動的な申請が必要
- 米国市場限定(当面)
- 競合のGoogle、Microsoftは無料で提供中
PSE Consultingは「4%の手数料は、小規模な米国マーチャントが既に支払っているカード処理手数料とほぼ同水準」と分析しています。AIシステムがもたらす高い購買意欲を持つトラフィックを考慮すると、この価格設定は合理的との見方が優勢です。
まとめ
OpenAIの4%手数料導入は、AIコマースが「実験的な取り組み」から「本格的な収益モデル」へと移行する象徴的な出来事です。従来のマーケットプレイスが検索アルゴリズムや広告配置で支配力を発揮してきたのに対し、AIプラットフォームは購買決定そのものをコントロールする立場を確立しつつあります。
Marketplace Pulseの試算では、ChatGPTは55億ドル規模のGMV(流通取引総額)を生み出す可能性があります。これはEtsyに匹敵する規模ですが、Amazonの第三者マーケットプレイス(推定5,750億ドル)の1%未満に過ぎません。
しかし、AIトラフィックが2025年に7倍、注文数が11倍に成長した事実を踏まえると、今後数年でこの構図は大きく変わる可能性があります。EC事業者にとって、低リスクで新チャネルを試せる今こそ、AIコマースへの参入を検討すべきタイミングといえるでしょう。
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