AIショッピング戦争:ライバル企業がAmazon包囲網を形成、エージェンティックコマースの覇権争い激化
鈴木章広
Twitter
Source: www.theinformation.com
この記事のポイント
- OpenAI・Shopify・Stripe・Microsoft・Walmart・PayPalなど10社以上がAmazonに対抗するパートナーシップを次々と締結し、「反Amazon包囲網」が形成されている
- McKinseyはエージェンティックコマースが2030年までに米国小売で1兆ドル規模に成長すると予測し、Amazonの広告ビジネス(年間560億ドル)を直接脅かす
- EC事業者はShopify連携やAgentic Commerce Protocolへの対応など、AI経由の販売チャネルに今から備えることが競争優位につながる
AI企業と小売・決済大手が"反Amazon連合"を形成

In AI Shopping Wars, Rivals Team Up to Take On Amazon — The Information
AI企業がチャットボットの新たな成長領域としてショッピングを推進する中、小売大手や決済企業も参入を急いでおり、AIを活用した購買で利益を得る企業間のパートナーシップが急速に広がっている。
AI企業がチャットボットの新たな成長分野としてショッピングを推進しており、小売大手や決済企業もこの流れに乗り遅れまいとしている。その結果、AIを活用した購買で収益を得ようとする企業間で提携のネットワークが生まれている。引用元:The Information
The Informationの報道によると、AI企業がチャットボットの新たな成長領域としてショッピングを推進する中、小売大手や決済企業も参入を急いでおり、AIを活用した購買で利益を得る企業間のパートナーシップが網の目のように広がっています。同記事では、OpenAI、Shopify、Stripe、PayPal、Walmart、Target、Etsy、Google、Microsoftなど少なくとも10社以上の提携関係がマッピングされています。
背景と業界動向
AIショッピング戦争の起点は2024年11月、PerplexityがAIショッピングエージェントを発表したことにあります。これに対しAmazonは法的措置を取り、外部AIエージェントによるサイトスクレイピングをブロックする防衛策に出ました。背景にあるのは、Amazonの年間560億ドルに達する広告事業の保護です。AIエージェントが商品推薦の主導権を握れば、Amazon内の検索広告モデルが根底から揺らぎかねません。
2025年9月にはOpenAIがChatGPTに「Instant Checkout」機能を搭載。Shopifyが商品データを提供し、StripeがAgentic Commerce Protocol(ACP)と呼ばれるオープン標準を共同開発することで、チャット内で商品発見から決済までを完結させる仕組みが実現しました。Stripeの「Shared Payment Token(SPT)」技術により、購入者の決済情報を外部に露出させることなく安全に取引できます。
主要プレイヤーの戦略と提携マップ
OpenAI陣営: ChatGPT(週間アクティブユーザー8億人)を基盤に、Shopify(100万以上の加盟店)、Stripe(決済基盤)、Etsy(初期パートナー)と連携。Target、Instacart、DoorDashとも提携を確保しています。ACPをオープンソース化することで、エコシステムの拡大を図っています。
Microsoft陣営: 2026年1月のNRF(全米小売業協会)カンファレンスで「Copilot Checkout」を発表。Shopify・PayPal・Stripe・Etsyとの統合を実現し、エンタープライズ顧客との既存関係を強みにOpenAI・Google・Amazonとの差別化を狙っています。
Walmart陣営: 自社AIアシスタント「Sparky」に加え、GoogleのGeminiと連携。AI会話内にWalmart商品を直接表示する「エブリウェア」戦略で、Amazonの閉鎖的アプローチとは対照的なオープンモデルを展開しています。
Amazon(防衛側): 自社AIアシスタント「Rufus」をAmazonアプリ内に閉じ込める戦略を選択。Rufus利用者は購入率が60%高く、年間100億ドル超の増収効果があるとされています。さらに、「Buy For Me」機能で競合ブランドの商品もAmazonアプリ内で購入可能にし、ユーザーの囲い込みを強化しています。
課題と現実のギャップ
ただし、AIショッピングの普及には課題も残ります。Modern Retailによれば、ChatGPTの全クエリに占めるショッピング関連はまだ約2%に過ぎません。OpenAIのInstant Checkoutも、商品データの整備が追いつかず、100万店舗への展開は遅れています。またAmazonのRufusについても、推薦の83%がAmazon自社に有利な商品であり、正確性は32%にとどまるとの批判があります。
アナリストのSucharita Kodali氏は「Amazonがeコマースのプレイヤーである限り、ChatGPTがAmazonからBuy Boxを奪うことは難しい」と指摘しており、消費者の信頼・決済情報の蓄積・購買習慣の壁は依然として高いのが現状です。
EC事業者への影響と活用法
Morgan Stanleyは、2030年までに米国消費者の約50%がAIエージェントを利用して買い物をするようになり、eコマース支出が1,150億ドル増加すると予測しています。この流れを踏まえ、EC事業者が今検討すべきポイントは以下の3つです。
1. AIチャネル対応の商品データ整備: Shopifyを利用している事業者は、商品データ(価格・在庫・画像・バリエーション)をAIが理解できる構造化データとして整備することが急務です。ACPへの対応もShopify経由であれば「1行のコード追加」で可能とされています。
2. マルチプラットフォーム戦略: ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Geminiなど複数のAIチャネルで商品が発見されるようにしておくことが重要です。特定のプラットフォームに依存しない分散型のアプローチが、リスク分散と顧客接点の最大化につながります。
3. 顧客体験の差別化: AIエージェントが価格比較を自動化する時代には、価格だけでなくブランドストーリー・レビュー・独自のサービスが差別化要因になります。Ralph Laurenが独自のAIスタイリングボットを展開したように、ブランド固有のAI体験を構築することも一つの選択肢です。
まとめ
AIショッピング戦争は、単なるテクノロジー競争ではなく、「消費者の購買意思決定にどのAIが最初に介在するか」という構造的な覇権争いです。OpenAI・Shopify・Stripe連合、Microsoft・PayPal連合、Walmart・Google連合が「反Amazon包囲網」を形成する一方、Amazonは自社エコシステム内でのAI体験強化で応戦しています。EC事業者にとっては、どの陣営にも対応できる柔軟な体制を今から整えておくことが、2026年以降の競争力を左右する鍵となるでしょう。
関連記事

Instant Checkoutとは?AIチャット内で購入完結する革新機能
【2分で解説】Instant Checkout(インスタントチェックアウト)の仕組みと導入メリットを解説。AIチャット内で商品発見から購入まで完結し、離脱率削減と購買転換率向上を実現するエージェンティックコマースの実装方法を紹介します。

MicrosoftがCopilot Checkoutを発表、Stripe・PayPal・Shopifyと連携しAI内で購入完結へ
MicrosoftがNRF 2026でCopilot Checkoutを発表。AI会話内で購入まで完結可能に。Shopify加盟店は自動登録、EC事業者は新たな販売チャネルとして早期対応が必要。

ShopifyがGoogle・Microsoft両陣営とエージェンティックコマースで提携、全方位戦略を展開
ShopifyがGoogleのUCPを共同開発しMicrosoft Copilot Checkoutにも連携。ECプラットフォームとして「どのAIでも買える」環境を構築。

