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Amazon、全てのAmazon GoとAmazon Fresh店舗を閉鎖へ—Whole Foods拡大と即日配送に戦略転換

鈴木章広

鈴木章広

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2026/01/28

この記事のポイント

  1. AmazonがAmazon Go(15店舗)とAmazon Fresh(57店舗)の全店舗を2月1日までに閉鎖
  2. 「独自の顧客体験と経済モデル」を構築できず、Whole Foods拡大と即日配送に注力
  3. EC事業者は実店舗より配送インフラ強化がコマースの成功要因となる転換点に注目

Amazon、実店舗戦略を大幅見直し

Amazon is closing its physical Amazon Go and Amazon Fresh stores

Amazon is closing its physical Amazon Go and Amazon Fresh stores

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Upon closing down some stores in 2024, an Amazon spokesperson said that the company 'couldn't make the economics work with the lease cost.' These retail closures will not impact customers who use Amazon for grocery delivery.

2026年1月27日、Amazonは全てのAmazon GoおよびAmazon Fresh実店舗を閉鎖すると公式ブログで発表しました。対象となるのはAmazon Go 15店舗とAmazon Fresh 57店舗の計72店舗で、大半は2月1日に営業を終了します。カリフォルニア州の店舗については、州法で義務付けられた事前通知期間に従い、より長期間営業を継続します。

Amazonは閉鎖の理由について「Amazon独自の実店舗において、大規模展開に必要な独自の顧客体験と適切な経済モデルをまだ構築できていない」と説明しています。一部の店舗はWhole Foods Market店舗に転換される予定です。

背景と業界動向

Amazonの実店舗食品事業は、2017年のWhole Foods Market買収(137億ドル)を皮切りに本格化しました。2018年にはレジなしコンビニ「Amazon Go」を一般公開し、2020年には食品スーパー「Amazon Fresh」の展開を開始。「Just Walk Out」技術によるレジなし体験は、小売業界の未来を示すものとして大きな注目を集めました。

しかし、CNBCの報道によれば、Amazonは2024年頃から一部店舗の閉鎖を進めており、当時の広報担当者は「リース費用との経済性を成り立たせることができなかった」と説明していました。今回の全面撤退は、その流れの延長線上にあります。

食品小売業界では、実店舗運営のコスト構造と、急成長するオンライン食品配送サービスとの間で、投資配分の最適化が課題となっています。Grocery Diveは、Amazonの今回の決定を「実験的な店舗フォーマットから、実績のあるビジネスモデルへの回帰」と分析しています。

三本柱の新戦略—Whole Foods・即日配送・新業態

Amazonは今回の発表で、食品事業の新戦略として3つの注力分野を明らかにしました。

Whole Foods Marketの大規模拡大

2017年の買収以降、Whole Foods Marketは40%以上の売上成長を達成し、現在550店舗以上を展開しています。Amazonはここからさらに「100店舗以上」の新規出店を計画しています。また、小型フォーマットの「Whole Foods Market Daily Shop」も2026年末までに5店舗を追加し、合計10店舗体制に拡大します。

即日配送サービスの強化

Amazonの公式発表によると、現在5,000以上の米国の都市・町で食品配送サービスを提供しており、2026年中にさらなる拡大を予定しています。特筆すべきは生鮮食品の成長率で、即日配送サービスにおける生鮮食品の売上は「2025年1月から40倍に成長」しました。生鮮食品を注文する顧客は、そうでない顧客と比較して約2倍の頻度で買い物をしているとのことです。

新しい実店舗フォーマットの開発

Amazonは実店舗から完全撤退するわけではありません。「新しいスーパーセンター」形式の店舗コンセプトを開発中で、生鮮食品、日用品、一般商品を幅広く取り扱う計画です。また、30分以内の超高速配送を提供する「Amazon Now」のテストも進行中です。

Just Walk Out技術の行方

Amazon Goで培われたレジなし技術「Just Walk Out」は、Amazonの自社店舗から姿を消しますが、サードパーティへのライセンス事業として拡大を続けます。

Chain Store Ageによると、Just Walk Out技術は現在、米国、英国、オーストラリア、カナダ、フランスの5カ国で360以上のサードパーティ店舗に導入されています。Amazonの担当者Anthony Leggett氏は「300以上の導入のうち150件は今年追加されたもので、この成長により2026年以降のさらなる拡大の準備が整った」と述べています。

導入コストは過去18カ月で50%以上削減され、スポーツスタジアム、大学、医療施設などへの導入が進んでいます。シアトルのLumen Fieldでは試合ごとの売上が47%増加し、カリフォルニア大学サンディエゴ校では万引きが83%減少したという実績が報告されています。

さらにAmazonは、フェスティバルやポップアップショップ向けのRFID対応レジレーン技術も発表。数時間で設置可能なこの技術は、2026年のコンサートツアーなどでの展開が予定されています。

EC事業者への影響と示唆

今回のAmazonの戦略転換は、EC事業者にとって重要な示唆を含んでいます。

配送インフラへの投資優先

Amazonが実店舗よりも即日配送に注力する判断は、「顧客接点としての配送」の重要性を示しています。生鮮食品を配送で購入する顧客の購買頻度が2倍になるというデータは、配送体験の質が顧客ロイヤルティに直結することを示唆しています。

実店舗の経済性の厳しさ

テクノロジー企業として最先端の技術を持つAmazonでさえ、実店舗の経済性を成り立たせることができませんでした。EC事業者が実店舗展開を検討する際には、リース費用、人件費、在庫管理コストを慎重に評価する必要があります。

技術のライセンスモデル

Just Walk Out技術のサードパーティ展開は、自社で店舗運営するよりもライセンス料を得るビジネスモデルの有効性を示しています。小売テクノロジーを持つEC事業者にとって、技術提供という選択肢も検討に値します。

まとめ

Amazonの今回の決定は、食品小売における「実店舗 vs オンライン」の構図に明確な答えを出したものと言えます。即日配送における生鮮食品売上40倍という成長率は、顧客が利便性を重視していることの証左です。

一方で、Whole Foods Marketの100店舗以上の新規出店計画や、新しいスーパーセンター構想は、Amazonが実店舗を完全に見限ったわけではないことも示しています。重要なのは「どの形式の実店舗か」という点であり、独自性と経済性を両立できるフォーマットの模索は続きます。

EC事業者が注目すべきは、2026年中に予定されている即日配送エリアの拡大と、新しいスーパーセンター構想の詳細です。Amazonの食品戦略の次の一手が、業界全体の方向性を左右する可能性があります。

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