EC・AIコマース ニュースダイジェスト(2026年1月16日)
鈴木章広
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Source: futurumgroup.com
この記事のポイント
- WalmartがGoogleと提携、GeminiでエージェンティックAIショッピングを実現
- FISが$135億買収完了、銀行向けエージェンティックコマースツールを発表
- エージェンティックコマース関連の発表が相次ぎ、業界標準化が加速
今日の注目ニュース
WalmartとGoogleがエージェンティックAI提携を発表

Walmart and Google Turn AI Discovery Into Effortless Shopping Experiences
Today, Google and Walmart Inc. share plans to pair the intelligence of Google's Gemini with Walmart and Sam's Clubs' unmatched assortment, value and convenience.
Walmart Inc.とGoogleは1月11日、NRF 2026(全米小売業協会のカンファレンス)において、エージェンティックAIショッピングの提携を発表した。次期Walmart CEOのJohn Furner氏とGoogle CEOのSundar Pichai氏が登壇し、両社の協業計画を明らかにした。
この提携により、GoogleのGemini AIを通じてWalmartとSam's Clubの商品を直接発見・購入できるようになる。Universal Commerce Protocol(UCP)を活用し、顧客がWalmartとGoogleのアカウントを連携すると、過去の購入履歴に基づいたパーソナライズされたレコメンデーションを受けられる。
Furner氏は「従来のウェブやアプリ検索からエージェント主導のコマースへの移行は、小売業における次の大きな進化を表している。我々はこの変化を見守るだけでなく、推進している」と述べた。Walmartは2025年10月にOpenAIのChatGPTとも同様の提携を結んでおり、両AIプラットフォームに対応することで、消費者がどちらのチャットボットを信頼するかを見極める戦略を取っている。
詳細記事: WalmartとGoogleのエージェンティックAI提携を徹底解説
FISが$135億のフィンテック買収を完了、エージェンティックコマースツールを発表

FIS Launches Industry-First Offering Enabling Banks to Lead and Scale in Agentic Commerce
FIS®, a global leader in financial technology, today announced the launch of its first offering to enable agentic commerce...
金融テクノロジー大手FIS(NYSE: FIS)は1月12日、Global PaymentsのIssuer Solutions事業(旧TSYS)を$135億(純購入価格$120億)で買収完了したと発表。同時に、銀行向け業界初のエージェンティックコマースツールを発表した。
この新ソリューションにより、銀行はAIエージェントと安全にコマースを行えるようになる。エージェンティックコマース取引では、AIが顧客に代わって商品の検索、交渉、購入を事前承認された決済手段で実行する。VisaとMastercardが戦略的パートナーとして参画し、Visa Intelligent CommerceとMastercardがAIエージェントによる取引を可能にする。
2026年Q1末までに全FIS発行銀行クライアントに提供開始予定。McKinseyの予測によると、エージェンティックコマースは2030年までに米国で最大1兆ドル、グローバルで3〜5兆ドルの小売収益を創出する可能性がある。
詳細記事: FISの$135億買収とエージェンティックコマースツール
Tredenceがエージェンティックコマースソリューションアクセラレータを発表

Tredence Unveils Agentic Commerce Solution Accelerators
Tredence, a global data science and AI solutions provider, today announced the launch of its Agentic Commerce accelerators.
データサイエンス・AIソリューションプロバイダーのTredenceは1月12日、エージェンティックコマースアクセラレータを発表した。このエンタープライズグレードのアクセラレータにより、エージェント主導のショッピング体験の設計・構築・スケールまでの時間を60%短縮できる。
「System of Agents」と呼ばれるエコシステムには、顧客インテリジェンスエージェント(Cosmos)、パーソナライズドコンテンツ生成エージェント、コンテキスト検索エージェント、ショッパーコンシェルジュエージェント、顧客エンゲージメントエージェントなど複数のAIエージェントが含まれる。
Google Cloudとの戦略的パートナーシップのもと、NRF 2026で発表された。Tredenceは世界トップ10小売企業のうち8社にデータ戦略を提供しており、150以上のAI/MLアクセラレータと12以上のAIエージェントを持つ。
詳細記事: Tredenceの「System of Agents」を徹底解説
Pinch AIがEC返品詐欺対策で$500万のシード資金を調達

Exclusive: Return fraud startup Pinch AI, built by PayPal vets, lands $5M to protect retailer margins
Pinch AI has raised $5 million in seed funding, co-led by Dynamo Ventures and Infinity Ventures.
PayPalとGoogleのベテランが設立したPinch AIが、Dynamo VenturesとInfinity Ventures共同リードで$500万のシード資金を調達した。米国小売業者が年間$1000億もの損失を被る返品詐欺問題に取り組む。
共同創業者兼CEOのArthi Rajan Makhija氏らは、PayPalとGoogleで数十億ドル規模の取引を保護する詐欺・不正利用対策システムを構築した経験を持つ。Pinch AIのデータによると、全EC購入の約25%が返品され、そのうち5%は完全な損失、10%は使用済み・破損品として返却される。
特に問題なのは「ワードローブィング」(特別なイベント用に購入し、使用後に返品)やSKUスワップ(新品を購入し、古いバージョンを返品)だ。Pinch AIを導入した小売業者は返品率が約8%減少し、VIP顧客維持率が20%向上。返品レビューの80%が自動化され、導入数ヶ月で貢献利益が10%向上した事例もある。
詳細記事: Pinch AIの返品詐欺対策ソリューション
AmazonとWalmartのエージェンティック戦略、対照的なアプローチ

Amazon and Walmart Swap Scripts as Retail's Agentic Future Looms
The changing face of retail is redefining the traditional roles of Amazon and Walmart as both seek to push innovation and technology.
小売業のエージェンティックAI時代において、AmazonとWalmartは対照的なアプローチを取っている。Walmartは「共有された標準を通じて」競争する方針を採用し、GoogleのUniversal Commerce Protocol(UCP)に参画。オープンスタンダードによる相互運用性を重視している。
一方Amazonは、独自システムの統制と速度を優先。シカゴの229,000平方フィートのメガストアと携帯型「Just Walk Out」決済キオスクを導入し、物理的小売とデジタル体験を統合している。記事は「Just Walk Outは標準ではなくサービスである」と指摘し、Amazonの閉鎖的アプローチを強調している。
この戦略の違いは、相互運用性vs統制、オープンスタンダードvs独自システムという根本的な対立を示唆しており、今後のエージェンティックコマース市場の勢力図に大きな影響を与える可能性がある。
詳細記事: AmazonとWalmartのエージェンティック戦略比較
エージェンティックコマース
Salesforceがエージェンティック企業戦略を推進

Salesforce's Agentic Enterprise Push Highlights the Role of Context
Salesforce's Agentic Enterprise strategy in the Spring '26 Release emphasizes shared context across agents for sales, service, and commerce.
Salesforceはエージェンティック企業への移行を加速している。同社のAgentforce戦略は、AIエージェントが企業の文脈を理解し、より効果的に業務を遂行することを目指している。
エージェンティックAIにおいて「コンテキスト」の重要性が強調されており、顧客データ、取引履歴、業務プロセスを統合することで、AIエージェントがより適切な判断を下せるようになる。Salesforceはこの分野でのリーダーシップを確立しようとしている。
Worldlineがエージェンティックコマース向け決済機能を発表

Worldline empowers agentic commerce with new AI capabilities
Worldline, a European leader in payment services, is introducing new capabilities to connect AI agents to its global payment ecosystem.
欧州決済大手Worldlineは、AIエージェントをグローバル決済エコシステムに接続する新機能を発表した。Model Context Protocol(MCP)サーバーを活用し、LLMとWorldlineのAPIを安全に橋渡しする。
マーチャント向けにはAIエージェントによる決済作成、返金、ステータス確認などのアクションが可能に。また、ConnectAI Hubという開発者向けハブも公開され、エージェンティック決済プロトコルの探索・テストができる。GoogleのAgent Payments Protocol(AP2)やUCPなど新興標準にも対応している。
Ballerineがエージェンティックコマースガバナンスプラットフォームを発表

Ballerine Launches Trusted Agentic Commerce Governance Platform
Ballerine, an AI-native risk and compliance platform for financial institutions, fintechs, and marketplaces, today announced the launch of its Trusted Agentic Commerce Governance Platform.
Ballerineは「Trusted Agentic Commerce Governance Platform」を発表した。エージェンティックコマースにおける信頼性とコンプライアンスを確保するためのプラットフォームだ。
AIエージェントによる取引が増加する中、本人確認、取引の正当性検証、規制遵守などのガバナンス課題が浮上している。Ballerineのプラットフォームはこれらの課題に対応し、安全なエージェンティックコマースの実現を支援する。
グローバルEC動向
TemuがクロスボーダーEC売上でAmazonに匹敵

'Temu matches Amazon in cross-border sales'
In a short period of time, Temu has become a dominant ecommerce player. 24% of consumers made their most recent cross-border purchase there.
中国発の越境ECプラットフォームTemuが、クロスボーダー売上でAmazonに匹敵するレベルに達したと報じられた。低価格戦略と積極的なマーケティングにより、急速に市場シェアを拡大している。
特に欧米市場での成長が著しく、従来のEC大手に対する脅威となっている。ただし、品質管理や配送時間などの課題も指摘されている。
決済・フィンテック
デジタルウォレットが最速成長の決済手段に

Digital wallets become the fastest-growing payment method
Digital wallets are now the fastest-growing payment method globally.
デジタルウォレットが世界で最も急成長している決済手段となった。Apple Pay、Google Pay、各種地域ウォレットの普及が加速している。
特にエージェンティックコマースの文脈では、AIエージェントがデジタルウォレットを通じて決済を実行するユースケースが増加。決済のデジタル化とAI化が同時に進行している。
消費者動向
ダイナミックプライシング規制の動き

Lawmakers Eye Dynamic Ecommerce Pricing
Some American legislators liken data-driven price changes to gouging. One senator requested an FTC investigation.
米国の立法者がECにおけるダイナミックプライシング(動的価格設定)の規制を検討している。AIを活用した価格最適化が消費者に不利益をもたらす可能性があるとの懸念が高まっている。
特に需要に応じてリアルタイムで価格を変動させる手法について、透明性の確保や上限設定などの規制案が議論されている。EC事業者は今後の規制動向に注意が必要だ。
まとめ
2026年1月16日は、エージェンティックコマース関連の重要発表が相次いだ一日となった。WalmartとGoogleの提携、FISの大型買収とエージェンティックツール発表、Tredenceのアクセラレータ発表など、業界の主要プレイヤーがエージェンティックコマースへの本格参入を加速させている。
特に注目すべきは、オープンスタンダード(Google UCP)を推進するWalmart陣営と、独自システムを維持するAmazonという対照的な戦略だ。この競争の行方が、今後のエージェンティックコマース市場の勢力図を決定づける可能性がある。
また、Pinch AIのようなスタートアップがEC返品詐欺という具体的な課題に取り組んでいる点も注目に値する。エージェンティックコマースの普及に伴い、新たな詐欺リスクへの対策も重要性を増すだろう。
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