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Walmartが描くエージェンティックコマースの未来像 - 4つの柱と「スクロールしない買い物」

鈴木章広

鈴木章広

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2026/01/14

この記事のポイント

  1. WalmartがAI主導のエージェンティックコマース戦略を本格始動
  2. Google・OpenAIとの提携で会話型ショッピングの業界標準を狙う
  3. 「実用性・パーソナライゼーション・没入感・先回り」の4本柱

Walmartのエージェンティックコマース構想

Walmart's agentic commerce vision: Practical, personalized, immersive and less scrolling

Walmart's agentic commerce vision: Practical, personalized, immersive and less scrolling

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Walmart's AI Acceleration VP Daniel Danker shares the company's agentic commerce vision

米小売最大手のWalmartが、AIエージェントによる次世代ショッピング体験「エージェンティックコマース」の実現に向けた包括的なビジョンを明らかにしました。2026年1月13日にConstellation Researchが報じた内容によると、同社のAI Acceleration部門VP Daniel Danker氏は「今年は試行錯誤が本格的な変革に変わる年」と宣言しています。

WalmartはOpenAIやGoogleといった主要AI企業との戦略的提携を通じ、AIエージェントに「破壊される側」ではなく「実行・履行のバックボーン」としてのポジションを確立しようとしています。

背景と業界動向

エージェンティックコマースとは、AIが従来の「検索して探す」という受動的な役割から、顧客のニーズを予測し能動的に提案・購入まで代行する「自律型エージェント」としての役割へ進化した商取引のあり方です。

Amazonが2024年にAIショッピングアシスタント「Rufus」をローンチし広告展開を開始して以降、大手小売各社はAIエージェント戦略の策定を急いでいます。Walmartは2025年6月に独自のAIアシスタント「Sparky」を発表し、競争に本格参入しました。

同社CEOのDoug McMillon氏は「これまでのECはずっと検索バーだった。それが変わろうとしている」と述べ、OpenAIとの提携発表で会話型コマースへの転換を宣言しています。

4つの柱で構成されるビジョン

Walmartのエージェンティックコマース戦略は、4つの明確な柱で構成されています。

実用的なソリューション

Danker氏は「AIには目的が必要だ。顧客の問題を解決することが非常に実践的」と強調します。同社のAI活用はすでに具体的な成果を出しており、ファッション生産リードタイムを最大18週間短縮、カスタマーケア対応時間を最大40%改善するなどの実績があります。

パーソナライゼーションの深化

「パーソナライゼーションは、まだ表面をなぞった程度。AIが新たな次元に導く」とDanker氏は語ります。Walmartは個人の購買履歴だけでなく、世帯構成、食事制限、地域コミュニティの文脈まで理解することを目指しています。

没入型エクスペリエンス

スマートグラスなどのデバイスを活用し、従来のスクロールベースのUIから脱却した、より人間中心のインタラクションを実現します。「スクロールする時間がずっと減るだろう」とDanker氏は予測しています。

先回りするコマース

「顧客のことを十分に理解し、洗剤が切れそうなことを把握できる。AIエージェントが切れる前に送り届ける」という、予測に基づく自動補充が最終形態として描かれています。

Google・OpenAIとの2大提携

Walmartは主要AIプラットフォームとの提携を通じ、複数の接点から顧客にリーチする戦略を取っています。

OpenAI ChatGPT連携

2025年10月に発表されたOpenAIとのパートナーシップでは、ChatGPT上で「Instant Checkout」機能を通じた直接購入が可能になりました。ユーザーは会話しながら商品を探し、チャット画面から離れることなく購入を完了できます。

OpenAI CEOのSam Altman氏は「日常の買い物をシンプルにするため、Walmartとの提携を嬉しく思う」とコメントしています。

Google Gemini連携

2026年1月11日にはGoogleとの提携が発表されました。Geminiアプリ内でWalmartおよびSam's Clubの商品が自動的にサジェストされるようになります。

Google CEOのSundar Pichai氏は「Walmartは小売のイノベーターであり、エージェンティックコマースを現実にするオープンスタンダードの構築で提携できることを嬉しく思う」と述べています。アカウント連携により、Walmart+やSam's Clubの会員特典も適用され、最短30分のデリバリーにも対応します。

AIアシスタント「Sparky」の進化

Walmartアプリ内のAIアシスタントSparkyは、同社のエージェンティックコマース戦略の中核を担います。現在は商品検索、レビュー要約、比較機能を提供していますが、今後は画像・音声・動画の理解、必需品の再注文、食事プラン作成、サービス予約へと機能を拡張する予定です。

Walmart顧客の81%がSparkyを利用して商品の在庫状況や詳細を確認しているとの調査結果もあり、すでに高い浸透率を示しています。また、同社はSparky内での広告表示テストも進めており、新たな収益源としても期待されています。

EC事業者への影響と活用法

Walmartのエージェンティックコマース戦略は、EC業界全体に重要な示唆を与えます。

まず、「検索窓」中心のUIは転換期を迎えています。会話型インターフェースへの対応は、商品情報の構造化やAI向けのメタデータ最適化を必要とします。商品説明文も「検索キーワード」から「AIが理解しやすい自然言語」へのシフトが求められるでしょう。

次に、複数のAIプラットフォームへの露出機会が生まれています。ChatGPTやGeminiといったプラットフォームでの商品表示は、新たなトラフィック獲得チャネルとなる可能性があります。

さらに、「先回りするコマース」の実現には、顧客の購買パターンや在庫データの高精度な分析が不可欠です。サブスクリプションモデルや自動補充サービスの導入を検討する好機といえます。

まとめ

Walmartのエージェンティックコマースビジョンは、「スクロールして探す」という従来の買い物体験を根本から変革しようとしています。Google、OpenAIという2大AIプラットフォームとの提携により、同社は会話型コマースの業界標準を主導する立場を築きつつあります。

一方で、Walmartの調査によれば、消費者の46%はAIエージェントに買い物全体を任せることに抵抗感を示しています。AIはあくまで「ガイド」であり、最終的な購入決定は顧客自身が行いたいという意向は明確です。

今後注目すべきは、Sparkyの機能拡張とGemini連携の具体的な展開、そしてエージェント内広告の収益モデルの成熟です。2026年が「試行錯誤から本格変革への転換年」となるか、引き続き動向を追っていく必要があります。

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