TikTok Shopが欧州市場に本格参入、独自物流「FBT」で現地フルフィルメントを加速
鈴木章広
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Source: daoinsights.com
この記事のポイント
- TikTok Shopが欧州6カ国で展開中、2026年はポーランド・オランダなど更なる拡大を計画
- 新物流サービス「Fulfilled by TikTok(FBT)」をドイツ・スペインで本格導入へ
- クリエイターマッチングと現地在庫を連携させた「コンテンツ駆動型」販売戦略で差別化
TikTok Shopが欧州で本格的な物流インフラを構築

TikTok Shop eyes Europe with new logistics strategy
TikTok Shop has Europe in its sights with a new logistics scheme to speed up local fulfillment, fueled by content-driven sales tactics.
TikTok Shopが欧州市場での本格的な物流インフラ構築に乗り出しました。スペイン、ドイツ、イタリアに設置した倉庫を拠点に、現地フルフィルメント体制を強化します。従来の越境EC特有の長い配送時間という課題を解消し、コンテンツとコマースを一体化させた独自のエコシステムを欧州全域に展開します。
背景と業界動向
欧州ソーシャルコマース市場の急成長
欧州のソーシャルコマース市場は急速に拡大しています。市場規模は2023年の258億ユーロから2028年には448億ユーロへと成長が予測されており、欧州ユーザーの約25%が既にSNS経由での購買を経験しています。
TikTokは欧州連合内で1億5,900万人の月間アクティブユーザーを抱え、2023年末比で11.5%の成長を記録しました。特に若年層を中心にショート動画を通じた商品発見(ディスカバリーコマース)が浸透しており、従来の検索型ECとは異なる購買行動が定着しつつあります。
TikTok Shop欧州展開の経緯
TikTok Shopは2021年に英国で初めて欧州市場に参入しました。その後、2024年12月にスペインとアイルランド、2025年3月にドイツ・フランス・イタリアへと展開を加速させました。現在、欧州6カ国で約7,210万人のユーザーがアクセス可能な状態にあります。
詳細解説
新物流戦略「Fulfilled by TikTok(FBT)」の全貌
今回発表された物流戦略の核心は、「Fulfilled by TikTok(FBT)」 と呼ばれる独自のフルフィルメントサービスです。
FBTの仕組み:- 出品者がスペイン・ドイツ・イタリアのTikTok指定倉庫に在庫を配送
- TikTokが保管・ピッキング・梱包・配送・返品対応まで一括代行
- 現地発送により配送時間を大幅短縮(越境配送の1〜2週間→数日以内)
既に英国では運用実績があり、ドイツではミュンヘンに物流チームを設置しています。マドリードでもフルフィルメント・オペレーション・マネージャーの求人が確認されており、欧州全域での物流網構築が進行中です。
参入条件と手数料体系
現時点でFBTへの参加は招待制となっており、以下の要件を満たす必要があります:
- 欧州内での在庫保有能力
- 対象国でのVAT(付加価値税)資格
- 指定倉庫への配送能力
なお、2026年1月8日より、ドイツ・スペイン・フランス・イタリア・アイルランドの5カ国でプラットフォーム手数料が5%から9%に引き上げられました(電子機器カテゴリは7%)。一方で、新規セラー向けには15日以内に5商品を出品すると60日間4%の優遇手数料が適用されるプロモーションも実施されています。
Amazon・Temu・SHEINとの競合構図
TikTok Shopの差別化ポイントは、物流とクリエイターマーケティングの一体化にあります。
| プラットフォーム | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| Amazon | 圧倒的な物流網・FBA | コンテンツ訴求力が弱い |
| Temu/SHEIN | 価格競争力・越境物流 | 配送時間・品質懸念 |
| TikTok Shop | コンテンツ×コマース融合 | 物流網は発展途上 |
TikTokは出品者と現地クリエイター・エージェンシーをマッチングし、倉庫から直接サンプルを送付します。インフルエンサーが商品到着後すぐにコンテンツ制作を開始できる体制を整備しています。これは検索型ではなく「発見型」の購買体験を提供する上で大きなアドバンテージとなります。
英国市場では、TikTok Shopの取引額が2023年から2024年にかけて93%成長を記録しました。同期間のAmazon英国の成長率12.7%を大きく上回っており、ソーシャルコマースの勢いを示しています。
今後の展開予測
2026年後半には、ポーランド・オランダ・ベルギー・ハンガリー・スウェーデンへの第3波展開が計画されています。特にポーランドは欧州第5位のEC市場規模を持ち、ドイツとの国境に位置する地理的優位性から、TikTok Shopの物流ハブとしての役割が期待されています。
EC事業者への影響と活用法
日本企業への示唆
TikTok Shopの欧州戦略から、日本のEC事業者が学べるポイントは多いです:
1. コンテンツと物流の同期が競争力に商品が届いてからコンテンツを作るのではなく、物流とマーケティングを同時設計する発想が求められます。TikTokのクリエイターマッチング機能は、この考え方を仕組み化したものです。
2. 現地フルフィルメントの重要性越境ECでは配送時間がコンバージョン率を大きく左右します。欧州展開を検討する事業者は、FBT活用や現地3PL(サードパーティ・ロジスティクス)との連携を視野に入れるべきでしょう。
3. ライブコマース・ショート動画の習熟TikTok Shopの成長エンジンはライブコマースとショート動画です。日本市場でも2025年にTikTok Shopが本格稼働しており、今のうちからコンテンツ制作のノウハウを蓄積しておくことが重要です。
まとめ
TikTok Shopの欧州展開は、単なる地理的拡大ではありません。「コンテンツ駆動型コマース」 と 「現地フルフィルメント」 を組み合わせた新しいEC体験の実験場となっています。
2024年の世界GMV332億ドルを背景に、TikTokは物流インフラへの本格投資を加速しています。AmazonやTemu・SHEINとは異なる軸で欧州EC市場のシェアを狙っています。
EC事業者にとっては、プラットフォームの選択肢が増えると同時に、コンテンツ制作能力が従来以上に求められる時代の到来を意味します。TikTok Shopの動向は、グローバルEC戦略を考える上で注視すべきトレンドです。
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