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Pacsunが仕掛ける「エージェンティックチェックアウト」革命—Gen Zに届くAIショッピングの最前線

鈴木章広

鈴木章広

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2026/01/21

この記事のポイント

  1. PacsunがSalesforce Agentforce Commerceを導入し、ChatGPT上で会話しながら直接購入できるエージェンティックチェックアウトを実現
  2. McKinseyは2030年までにエージェンティックコマース市場が世界で最大5兆ドルに達すると予測
  3. EC事業者は今すぐ商品データの整備とAIプラットフォーム連携の検討を開始すべき時期に来ている

Pacsunがエージェンティックチェックアウトで新時代のCXを実現

Pacsun Uses Agentic Checkout for Seamless CX

Pacsun Uses Agentic Checkout for Seamless CX

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While at the 2026 NRF Big Show, Editor-in-Chief Joe Keenan discussed agentic checkout with Shirley Gao of Pacsun and Sharon Gee of Commerce.

米国の若者向けアパレル小売大手Pacsunが、SalesforceのAgentforce Commerceプラットフォームを活用し、ChatGPT上での会話型ショッピングとシームレスなチェックアウト体験を実現しました。

PacsunのChief Digital & Information Officer、Shirley Gao氏はSalesforceの公式発表において次のように述べています。「Agentforce CommerceとOpenAIの統合は、ChatGPTのようなAIプラットフォームに当社の製品を展開する強力な機会だと考えています。これにより、会話を有意義なエンゲージメントに変え、Gen ZやGen Alphaのお客様との永続的な関係を構築できます」

この動きは、2025年後半から急速に進展する「エージェンティックコマース」のトレンドを象徴するものです。消費者がAIアシスタントを通じて商品を発見し、比較し、そのまま購入を完了する—従来のECの常識を覆す新しい購買体験が現実になりつつあります。

なぜ今「エージェンティックコマース」なのか

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって商品検索、比較、価格交渉、購入までを自律的に行う新しいコマースモデルです。McKinseyのレポートによると、2030年までに世界で最大5兆ドル、米国のB2C小売だけでも1兆ドル規模の市場になると予測されています。

この変革は、インターネットやスマートフォンの普及よりも急速に進むとMcKinseyは分析しています。理由は明快で、AIエージェントは既存のデジタルインフラをそのまま活用できるため、新しいインフラの構築を待つ必要がないからです。

実際、数字が急成長を裏付けています。Adobeによると、2025年のホリデーシーズンにおけるAI経由のECトラフィックは前年比693%増加しました。Salesforceのデータでは、2025年感謝祭週末のオンライン注文の17%(金額にして135億ドル)にAIエージェントが関与しています。

Pacsunの戦略とAgentforce Commerceの機能

Pacsunが選んだエージェンティック戦略

PacsunのCEO、Brie Olson氏はModern Retailのインタビューで、「エージェンティックコマースは当社にとって新しい話題ではない」と強調しています。「過去12〜18ヶ月間、エージェンティックコマースがどのように展開されるか、注視してきました」

Olson氏は8月以降の急速な動きに驚きを認めつつも、「慎重かつ戦略的なアプローチでエージェンティックな世界に適応している」と述べています。

CIOのShirley Gao氏のリーダーシップの下、Pacsunは18ヶ月のAI導入ロードマップを策定。データ基盤としてSnowflakeへの移行を早期に完了させ、AI活用の土台を整備してきました。「Gen ZやGen Alphaは離れる時に何も言わない。彼らが去る前にシグナルを検知できるスピードが必要です」とGao氏は語っています。

Agentforce Commerceの具体的機能

SalesforceのAgentforce Commerceは、小売業者がエージェンティックショッピングの全行程をコントロールできる初のプラットフォームとして設計されています。主要な機能は以下の通りです。

Guided Shopping(現在利用可能)

リッチなコンテンツ、インタラクティブな画像カルーセル、ワンクリックチェックアウトを備えた会話型ショッピング体験を提供します。従来の2倍のパフォーマンス速度を実現しています。

Order Routing for Order Management(2026年冬リリース予定)

複雑なフルフィルメントネットワーク全体で注文を最適にルーティングし、コスト削減と収益最大化を両立させます。

Agentic Commerce Protocol(ACP)連携

Stripeとの連携により、ChatGPT内での直接購入・決済が可能になります。消費者は会話を離れることなく、商品発見から購入完了までをシームレスに行えます。

業界全体の動向

Pacsunの取り組みは孤立した事例ではありません。GoogleはNRF 2026でUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表し、Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発。Visa、Mastercard、American Express、Stripeなど20社以上が支持を表明しています。

MicrosoftもCopilot Checkoutを展開中で、「意思から取引まで数秒で完了し、会話を離れる必要がない」(Shopify VP Mani Fazeli氏)体験を提供しています。

一方、Amazonは「Buy For Me」というエージェンティックツールをリリースしながらも、外部AIエージェントからの自社サイトへのアクセスをブロック。560億ドル規模の広告事業を守る戦略と見られています。

EC事業者への影響:今すぐ始めるべき3つのアクション

1. 商品データの「AI最適化」

エージェンティックコマースの時代、AIが商品を「理解」できるかどうかが販売の鍵を握ります。Feedonomicsのようなツールを活用し、AI検索エンジンやショッピングアシスタントに商品情報を最適化して提供することが重要です。

Gao氏は「予測AIはファーストパーティデータなしでは失敗する。しかしデータがあれば、顧客が『どこで買うべき?』と聞いたときにPacsunが正確で関連性のある回答として表示されるようにできる」と説明しています。

2. 主要AIプラットフォームとの連携検討

ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotなど、消費者が日常的に使用するAIアシスタントとの連携が販路拡大の鍵になります。現時点ではSalesforce、Shopify、BigCommerceなどのプラットフォームを通じた連携が現実的な選択肢です。

3. 若年層へのリーチ戦略の見直し

Salesforceによると、消費者の39%、Gen Zの過半数がすでにAIを商品発見に活用しています。Morgan Stanleyの調査では、米国人の23%が過去1ヶ月以内にAI経由で購入を行っています。従来のSEOやリスティング広告だけでなく、「AIに選ばれる」ための最適化が新たなマーケティング課題となっています。

まとめ:EC事業者は「AIファースト」への転換点に立っている

Pacsunのエージェンティックチェックアウト導入は、単なる先進事例ではなく、EC業界全体の変革の始まりを示しています。

Retail Brewが「2025年はエージェンティックコマース元年」と評したように、2026年は大手テック企業、小売業者、スタートアップが「誰のAIエージェントがショッピングのデフォルトインターフェースになるか」を競う年になると予測されています。

ただし、現状では課題も残っています。Forresterのアナリスト、Emily Pfeiffer氏は「約束と現実のギャップに驚いている」と指摘し、実用的なユースケースはまだ限定的であることを認めています。

しかし、変化のスピードを考えれば、今から準備を始めることが重要です。商品データの整備、AIプラットフォームの動向把握、そして若年層の購買行動の変化への対応—これらの準備が、エージェンティックコマース時代の競争優位を左右することになるでしょう。

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Agentic CommerceAIRetailSalesforceGen Z

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