Microsoft Copilot Checkout登場、AIコマース4大陣営の競争構造が明確に
鈴木章広
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Source: about.ads.microsoft.com
この記事のポイント
- MicrosoftがCopilot Checkoutを発表し、AIコマース市場は4大陣営体制へ
- Google・OpenAI・Microsoft・Perplexityがそれぞれ異なるプロトコルと収益モデルで競争
- EC事業者は各プラットフォームの収益モデルの違いを理解した上での対応が必要に
AIコマース市場に4つの勢力圏が形成

Microsoft Copilot Checkout Enters the AI Commerce Race
Microsoft launches Copilot Checkout, entering the agentic commerce race with its own in-chat purchasing capability.
2026年1月8日、MicrosoftはNRF 2026において「Copilot Checkout」を正式発表しました。これにより、AIコマース市場はGoogle、OpenAI、Microsoft、Perplexityという「4大陣営」による本格的な競争時代に突入しています。
各陣営は独自のプロトコルと収益モデルを持ち、AIを介した購買体験の主導権を争っています。FourWeekMBAの分析では、この競争構造を以下のように整理しています。
| プラットフォーム | プロトコル | 収益モデル |
|---|---|---|
| Universal Commerce Protocol (UCP) | CPC広告 | |
| OpenAI | Agentic Commerce Protocol (ACP) | 取引手数料 |
| Microsoft | Copilot Checkout | 未定 |
| Perplexity | PayPal連携 | 未定 |
背景と業界動向
AIコマース市場は2026年に209億ドル規模に達すると予測されています。さらにMcKinseyのレポートでは、2030年までに世界で3〜5兆ドル規模の市場機会が生まれると予測されています。
従来は「検索→サイト訪問→比較→購入」という導線が標準でした。エージェンティックコマースでは、この離散的なステップが「AIへの指示→チャット内で購入完結」というシームレスな体験へと変わります。
各社が異なる収益モデルを採用している点は注目に値します。Googleは従来の広告ビジネスを踏襲し、OpenAIは取引手数料という新モデルに挑戦しています。
4大陣営の戦略と動向
Google: オープン標準でエコシステム構築(CPC広告モデル)
Googleは2026年1月11日のNRFでUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表しました。UCPは商品発見から購入、購入後サポートまでをカバーするオープンスタンダードです。
Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発され、Adyen、American Express、Best Buy、Mastercard、Stripe、Visa、Zalandoなど20社以上が支持を表明しています。
収益モデル: CPC広告Googleの戦略は明確です。検索広告と同様に、AIエージェント経由での商品露出に対してCPC(クリック単価)課金を行います。広告ビジネスで培ったモデルをAIコマースにも適用する形です。
OpenAI: 決済インフラとの深い統合(取引手数料モデル)
OpenAIは2025年9月、Stripeとの提携によりAgentic Commerce Protocol(ACP)を発表しました。ChatGPT内で直接購入できる「Instant Checkout」機能を実現しています。
ACPはApache 2.0ライセンスのオープンソースで公開されており、Shopifyの100万以上の加盟店が順次対応予定です。Stripeをすでに利用している事業者は、わずか1行のコードでエージェンティック決済を有効化できます。
収益モデル: 取引手数料OpenAIは広告ではなく、取引成立時の手数料で収益を得るモデルを採用しています。これは従来の広告モデルとは根本的に異なり、「購入完了」という成果に対して課金する形です。EC事業者にとっては、費用対効果が明確になるメリットがあります。
Microsoft: エンタープライズ基盤を活かした独自路線(収益モデル未定)
MicrosoftはPayPal、Stripe、Shopifyと提携し、Copilot内で購入を完結できる機能を実装しました。
月間1億人以上のCopilotユーザーと、Microsoft 365やAzureを通じた8億人以上のユーザー基盤が強みです。特にエンタープライズ顧客は「Microsoft製品内で完結するソリューション」を求めています。
収益モデル: 未定(TBD)興味深いのは、OpenAIへの130億ドル以上を投資している最大の株主でありながら、OpenAIのACPとは別のインフラを構築している点です。FourWeekMBAは「コマースは戦略的すぎて外部に委ねられない」というMicrosoftの判断を指摘しています。収益モデルは未発表ですが、サブスクリプション収益の補完や広告モデルなど複数の選択肢が考えられます。
Perplexity: 検索AI特化のアプローチ(収益モデル未定)
Perplexityは2025年11月、PayPalとの提携により「Instant Buy」機能をローンチしました。ユーザーは商品リサーチから購入までをチャット内で完結できます。
5,000以上のPayPal加盟店がすでに対応しており、Abercrombie & Fitch、Ashley Furniture、Wayfair、NewEggなどから購入可能です。BigCommerce、Shopware、Wixプラットフォーム上の事業者も対応しています。
収益モデル: 未定(TBD)以前の「Buy With Pro」ではPerplexityが購入の仲介役を務めていましたが、新しいモデルでは加盟店が「マーチャントオブレコード」として顧客関係を維持します。PayPalとの戦略的提携では、PayPal/VenmoユーザーにPerplexity Pro(年額200ドル相当)を無料提供するなど、ユーザー獲得に注力しています。
収益モデルの違いがEC事業者に与える影響
4大陣営の収益モデルの違いは、EC事業者にとって重要な判断材料となります。
CPC広告モデル(Google)- メリット: 露出に対する費用が予測しやすい
- デメリット: クリックされても購入に至らない場合のコスト負担
- メリット: 成果報酬型で費用対効果が明確
- デメリット: 手数料率によっては利益率を圧迫
- 今後の発表を注視する必要あり
- 早期参入による優遇条件の可能性
EC事業者への影響と活用法
短期的なアクション(2026年内)
1. 自社の決済基盤を確認するShopify利用事業者は、複数プラットフォームに自動的に対応可能です。Stripe利用事業者はACP対応が容易、PayPal利用事業者はPerplexityへの対応が容易です。
2. 各プラットフォームの収益モデルを比較するGoogleのCPC広告は既存の広告運用ノウハウが活かせます。OpenAIの取引手数料は新規顧客獲得チャネルとして検討価値があります。Microsoft・Perplexityは収益モデル発表を待ちつつ、技術対応は先行して進めることを推奨します。
3. 構造化データの整備を進めるどのプラットフォームでもAIが商品を適切に理解・推薦するためには、構造化された商品データが必須です。スキーママークアップの実装を優先してください。
中長期的な視点
エージェンティックコマース時代には、「どのAIから自社商品が選ばれるか」が売上を左右します。各プラットフォームの収益モデルと自社の利益構造を照らし合わせ、最適なチャネルミックスを検討してください。
また、4陣営のうち複数に対応する「マルチプラットフォーム戦略」が現実的な選択肢となります。特定プラットフォームへの依存はリスクがあるためです。
まとめ
MicrosoftのCopilot Checkout参入により、AIコマース市場はGoogle・OpenAI・Microsoft・Perplexityという「4大陣営」体制が明確になりました。
注目すべきは、各陣営が異なる収益モデルを採用している点です。GoogleはCPC広告、OpenAIは取引手数料という明確な違いがあり、Microsoft・Perplexityは収益モデルを模索中です。
EC事業者にとっては、単に「どのプラットフォームに対応するか」だけでなく、「どの収益モデルが自社に適しているか」という視点での検討が必要になります。まずは自社の決済基盤を確認し、対応コストと期待効果を試算することから始めることをお勧めします。
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