Shopify社長が語る「メリットベース・ショッピング」とは - AIエージェントが変える小売の民主化
鈴木章広
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Source: www.retailbrew.com
この記事のポイント
- Shopify社長がNRFでエージェンティックコマースの未来像を発表しました
- AIエージェントが広告費ではなく「商品の実力」で発見される時代が到来します
- EC事業者は商品データの最適化とUCPへの対応が急務となります
Shopify社長、「メリットベース・ショッピング」でブランド間の競争条件が平等に

Shopify president: Agentic commerce could usher in 'merit-based shopping'
AI agent-based shopping could increase e-commerce penetration and ultimately 'level the playing field' for brands, Harley Finkelstein told Retail Brew.
2026年1月16日、Shopify社長のHarley Finkelstein氏は米国小売業連盟(NRF)の年次カンファレンスで、AIエージェントを活用した買い物が「メリットベース・ショッピング」の時代を切り開くと語りました。これは広告への投資額ではなく、商品の品質や適合性に基づいて消費者に発見される新しい小売のパラダイムを意味します。
同氏は過去12ヶ月間でShopifyストアへのAIエージェント経由の注文が14倍に増加したことを明かし、「基盤はまだ小さいものの、急速に成長しています」と述べています。
背景と業界動向
Universal Commerce Protocol(UCP)の登場
NRFにおいて、Googleは新しいオープン規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表しました。ShopifyやWalmart、Targetとの共同開発により生まれたこの規格は、AIエージェントと小売業者を接続する標準プロトコルです。既に20社以上の企業が支持を表明しており、Etsy、Wayfair、Home Depot、Best Buy、Macy's、MastercardやVisaなどの決済企業も名を連ねています。
UCPにより、消費者はAIプラットフォーム内で割引コードの適用、ロイヤルティ情報の入力、サブスクリプションの購入といった一連の購買行動を完結できるようになります。
エージェンティックコマースの急成長
業界全体でエージェンティックコマースへの注目が高まっています。Morgan Stanleyの試算によれば、2030年までに米国のEコマース市場の10〜20%(最大3,850億ドル)をエージェンティックショッパーが占める可能性があります。また、2025年のホリデーシーズンにはAI主導の小売トラフィックが前年比693%増加したとAdobeが報告しており、この急成長は続く見込みです。
「メリットベース」とは何か - 広告費から商品力へのシフト
従来の広告モデルとの違い
Finkelstein氏は「メリットベース・ショッピング」の概念を、デザイナーのTom Sachsの例で説明しています。Tom SachsはNikeと共同でNikeCraftというスニーカーラインを展開していますが、大規模な広告予算やSEO最適化を行っていません。
従来の検索広告やスポンサード表示では、このようなニッチなブランドが消費者の目に触れる機会は限られていました。しかしAIエージェントは、ユーザーの好み(限定版アイテムが好き、デザインや建築に興味がある、KithやSupremeのようなブランドを愛用しているなど)を理解し、それに最適な商品を推奨します。
競争の民主化
「エージェントでの検索結果は、広告ベースではなくメリットベースです。誰がより多くお金を払ったかではなく、実力で評価されます。これが民主主義であり、競争条件を平等にします」とFinkelstein氏は述べています。
この変化は、マーケティング予算の少ない中小ブランドやDTCブランドにとって、大手企業と対等に競争できる機会を意味します。
主要プラットフォームの動向
Shopifyの戦略
Shopifyは複数のAIプラットフォームとの連携を進めています。
- Google連携:Google検索のAIモードおよびGeminiアプリ内での直接販売が近日開始予定です
- Microsoft連携:Copilot Checkout機能により、Microsoft Copilot内での購入完了が可能になります
- ChatGPT連携:Agentic Storefrontsを通じた統合を継続しています
さらにShopifyは、Shopify以外のプラットフォームを利用するブランドもShopify Catalogにアクセスできる「Agentic Plan」を発表しました。これにより、自社のオンラインストアを持たないブランドでもAIチャネルでの販売が可能になります。
競合他社の動き
AI時代のショッピング主導権を巡る競争は激化しています。
- Amazon:自動購入機能を備えたRufusを拡張する一方、外部エージェントを自社サイトからブロックしています。これは560億ドル規模の広告事業を守るための戦略とみられています
- OpenAI:ChatGPTに決済機能を組み込み、Target、Instacart、DoorDashなどと提携しています
- Perplexity:2024年11月からショッピングエージェントを提供開始しています
EC事業者への影響と活用法
今すぐ取り組むべきこと
Finkelstein氏はEC事業者に対し、以下の対応を推奨しています。
- 商品カタログの最適化:商品がAIエージェントに正しくインデックスされ、シンジケートされるよう、データの精度を高めてください
- UCPへの対応確認:商品ごとに必要な情報がプロトコルに含まれているか確認することが重要です
- 担当者の配置:これらの新しい流通チャネルを監視・最適化する専任リソースの確保を検討してください
信頼構築の重要性
一方で課題も存在します。eMarketerの調査によれば、AIの推奨を完全に信頼する消費者は46%にとどまり、89%は購入前に情報を確認しています。エージェンティックコマースの本格普及には、消費者の信頼獲得が不可欠です。
EC事業者にとっては、AI経由で発見されることと同時に、最終的な購入決定を後押しする信頼性の高い情報提供が求められます。
まとめ
Shopify社長の発言は、Eコマースが新たな転換点を迎えていることを示しています。AIエージェントが消費者の購買行動を仲介する時代において、ブランドの発見は広告予算ではなく商品の実力で決まるようになります。
Finkelstein氏は「2026年はコマースが音速の壁を突破する年になる」と予測しています。音速の壁を破ると抵抗が消え、スピードが劇的に加速するように、AIエージェントの普及がEコマースの浸透率を大きく押し上げる可能性があります。
EC事業者にとって、この変化は脅威ではなく機会です。商品データの最適化、UCPへの対応、そしてAIエージェント時代に適した戦略の構築が、今後の競争力を左右することになるでしょう。
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