Omise AI

小売業者の75%がエージェンティックショッピングに未対応 - Patchworks調査が示す技術スタックの課題

鈴木章広

鈴木章広

Twitter
2026/01/20

この記事のポイント

  1. 英国小売業者の27%のみがエージェンティックショッピングに対応可能な技術インフラを保有
  2. 60%の小売業者がシステム連携不足により年間損失を計上、10%は年間100万ポンド以上の損失
  3. POSシステム(34%)、CRM(32%)、ECプラットフォーム(27%)が主要な連携課題

Patchworks調査が示す小売業者の準備状況

Only one in four retailers ready for agentic shopping, Patchworks warns

Only one in four retailers ready for agentic shopping, Patchworks warns

別タブで開く

Just 27% of UK retailers say their technology stack is connected and scalable enough to support agentic shopping - leaving most unprepared.

統合プラットフォームを提供するPatchworksの調査によると、英国の小売業者のうち、エージェンティックショッピングに対応できる技術スタックを持っているのはわずか27%に過ぎないことが明らかになりました。

背景と業界動向

エージェンティックコマースとは

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって商品検索、比較、注文、決済までを自律的に処理する次世代のEC形態です。従来のECが「消費者が能動的に商品を探す」モデルだったのに対し、エージェンティックコマースでは「AIが消費者の要望を理解し、最適な選択肢を提示・購入まで代行する」という根本的なパラダイムシフトが起きています。

急速に進む業界の動き

2026年1月、業界では大きな動きが相次いでいます。Googleは Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発した「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表しました。これはエージェンティックコマースのオープン標準であり、Best Buy、Mastercard、Visa、Stripeなど20社以上が支持を表明しています。

また、Microsoftも1月8日にDynamics 365向けのエージェンティックAIソリューションを発表し、小売業務全体のインテリジェント自動化を推進しています。

McKinseyの予測によれば、2030年までにエージェンティックコマースによる取引額は米国B2C市場だけで最大1兆ドル、グローバルでは3〜5兆ドルに達する可能性があるとしています。

詳細解説:Patchworks調査の全貌

調査概要

Patchworksが調査会社OnePollに委託した「Retail Integration Report 2025/26」は、2025年8月に英国の小売業界における技術決定権を持つ200名のシニアリーダーを対象に実施されました。

システム連携不足による損失

調査結果は衝撃的です。

収益損失の実態:
  • 60% の小売業者がシステム連携不足により年間収益を損失
  • 10% が年間100万ポンド(約1.9億円)以上の損失
  • 48% が5万ポンド以上、14% が50万ポンド以上の損失
  • 31% がブラックフライデーなど繁忙期に直接的な売上損失を経験
運用上の課題:
  • 39% のチームが売上成長より接続問題の修正に多くの時間を費やしています
  • 58% がシステム性能低下による顧客評判の悪化を懸念しています
  • 42% が繁忙期のダウンタイムを恐れて睡眠不足になっています
  • 40% が高負荷時のインフラ障害を懸念しています

連携の問題箇所

最も問題が多いシステム領域は以下の通りです:

  1. POSシステム: 34%
  2. CRM: 32%
  3. ECプラットフォーム: 27%

現在の統合状況

小売業者の統合成熟度は低い水準にとどまっています:

  • 27% のみが「完全に連携・スケーラブル」
  • 33% が「リアクティブ段階で頻繁に障害発生」
  • 31% がカスタム統合に依存(高コスト開発が必要)
  • 20% がスケールしにくいプラグインを使用
  • 18% が手動コーディングに依存
  • 13% のみがiPaaSソリューションを採用
  • 11% が統合手段を持っていません

Patchworks CEOのJim Herbert氏は「統合は長らくバックエンドの技術と見なされてきたが、実際にはすべての取引の背後にある利益エンジンだ」と述べています。

EC事業者への影響と活用法

なぜ今、対応が急務なのか

AIエージェントは人間のように「待ってくれません」。商品情報、在庫状況、価格、配送情報に瞬時にアクセスできなければ、AIエージェントはそのサイトをスキップして競合他社へ移動します。つまり、システム統合の遅れは、将来的な顧客接点の喪失に直結します

eMarketerによれば、現在すでに全検索の約6%がAI回答エンジン経由で行われており、小売業者へのAI経由トラフィックは前年比1,200%増加している一方、従来の検索トラフィックは10%減少しています。

具体的な対策

1. システム連携状況の棚卸し

まず現状を把握します。POS、CRM、EC、在庫管理、OMS、WMSなど主要システム間のデータフローを可視化し、サイロ化している箇所を特定します。

2. iPaaS(Integration Platform as a Service)の検討

カスタム開発やプラグインに依存せず、iPaaSソリューションを導入することで、柔軟かつスケーラブルな統合基盤を構築できます。調査では13%のみが導入済みですが、今後の標準となる可能性が高いです。

3. APIファーストの設計思想

新規システム導入時は、APIの充実度を選定基準に加えます。GoogleのUCPのようなオープン標準への対応も視野に入れるべきです。

4. リアルタイムデータ同期の実現

AIエージェントは常に最新情報を求めます。在庫、価格、商品情報のリアルタイム同期は必須要件となります。

5. 段階的な移行計画

一度にすべてを刷新するのは現実的ではありません。売上インパクトの大きい領域(在庫連携、注文処理など)から優先的に統合を進めます。

まとめ

Patchworksの調査は、エージェンティックコマース時代に向けた小売業者の準備状況に深刻な課題があることを浮き彫りにしました。27%という「対応可能」の数字は、裏を返せば73%がこの新しい購買体験に乗り遅れるリスクを抱えていることを意味します。

Google、Microsoftといったテック大手がエージェンティックコマースのインフラ整備を急速に進める中、小売業者側のシステム統合は「やがて必要になる」ではなく「今すぐ着手すべき」経営課題となっています。システム連携への投資は、将来のAIエージェント経由売上を確保するための基盤投資と捉えるべきでしょう。

関連記事

タグ

Agentic CommerceRetailIntegration

この投稿をシェアする

XFacebookLinkedIn

導入や進め方について まずはお気軽にご相談ください

技術や市場の変化が早い今こそ、早めの整理が有効です。 情報収集から具体化まで、段階に応じてサポートします。

お問い合わせ