Home DepotがGoogle Cloudと提携、エージェンティックAI「Magic Apron」で店舗体験を変革
鈴木章広
Twitter
Source: corporate.homedepot.com
この記事のポイント
- Home DepotがGoogle Cloudと戦略的パートナーシップを拡大、AIアシスタント「Magic Apron」を大幅強化
- エージェンティックAIがリアルタイムで商品案内から専門的アドバイスまで提供、小売業のAI活用が新段階へ
- EC事業者は「検索から実行へ」のAI体験設計を参考に、顧客の購買プロセス全体を支援する仕組みを検討すべき
NRF 2026で発表された新たなAI戦略

The Home Depot and Google Cloud Launch Agentic AI Tools to Help Customers and Associates Bring Projects from 'How-to' to 'Done'
Home DepotとGoogle Cloudがエージェンティックコマースの新時代を切り開く
2026年1月11日、米国小売業界最大のイベント「NRF 2026」において、Home DepotとGoogle Cloudが戦略的パートナーシップの拡大を発表しました。この提携により、AIアシスタント「Magic Apron」に新たなエージェンティックAI機能が追加され、DIYユーザーからプロの建設業者まで、あらゆる顧客にリアルタイムの専門的サポートを提供します。
Google CloudのGeminiモデルと「Gemini Enterprise for Customer Experience」を活用し、Home Depotは「AI-first」のパーソナライズされた顧客体験を実現。店舗での買い物体験を根本から変革する取り組みとして注目を集めています。
背景と業界動向
小売業界では、AIを活用した顧客体験の向上が急速に進んでいます。しかし、これまでの多くのAIツールは単純な検索支援やFAQ対応にとどまっていました。
Home Depotの取り組みが画期的なのは、「エージェンティックAI」という概念を本格的に導入している点です。エージェンティックAIとは、単にユーザーの質問に答えるだけでなく、複雑なタスクを自律的に計画・実行できるAIを指します。つまり、「検索して終わり」ではなく「検索から購入、プロジェクト完了まで」を一貫してサポートするのです。
Google Cloudは同日、「エージェンティックコマースの新時代」と題したブログを公開。Home Depotに加え、Kroger、Lowe's、Papa John's、Woolworthsなど大手小売企業がGemini Enterprise for CXを採用していることを明らかにしました。小売業界全体で、AIを「受動的なツール」から「能動的なパートナー」へと進化させる動きが加速しています。
Magic Apronの革新的機能
会話型プロジェクトガイダンス
Magic Apronの最大の特徴は、自然言語での会話を通じてプロジェクト全体をサポートする点です。例えば「ガラスタイルに最適な目地材は何?」と質問すると、単なる商品リストではなく、DIYガイド、おすすめ商品、そして店舗内の正確な棚位置まで教えてくれます。
水漏れ修理からキッチンの全面リフォームまで、あらゆる規模のプロジェクトに対応。顧客は専門知識がなくても、AIのガイダンスに従ってプロジェクトを完遂できます。
マルチモーダル機能
近日中に追加予定のマルチモーダル機能により、画像のアップロードや可視化ツールも利用可能になります。例えば、壊れた蛇口の写真をアップロードすれば、AIが問題を診断し、必要な部品と修理手順を提案します。
店舗内リアルタイムナビゲーション
小売業界初となる「ローカライズAIエージェント」として、Magic Apronは店舗のリアルタイム在庫情報と連携。「通路レベルの精度」で商品の位置を案内し、店内での移動時間を大幅に短縮します。
現在、一部店舗でテスト中であり、数か月以内に全米展開が予定されています。
プロフェッショナル向け機能の強化
建設業者やリフォーム業者といった「プロ」顧客向けには、AI搭載の材料リスト生成機能を提供。2025年11月にベータ版がリリースされています。
音声またはテキストでプロジェクトを説明するだけで、必要な材料リストを自動生成。既存のリストをアップロードしたり、部分的な情報から残りを補完することも可能です。これにより、見積もり作成の時間を大幅に削減できます。
配送・フルフィルメントへのAI活用
Home Depotは配送業務にもエージェンティックAIを適用しています。GeminiとGoogle Maps Platformを組み合わせた新しい「ルートインテリジェンス」ツールにより、配送の成功率を向上させます。
このシステムは、顧客固有の配送情報に加え、天候や道路状況などの外部データを分析。配送前に潜在的なアクセス問題を特定し、適切な機材やクルーサイズを推奨します。配送失敗を未然に防ぐことで、顧客満足度の向上とコスト削減を両立します。
カスタマーサポートの進化
顧客サポート領域では、SMS、チャット、電話での会話型AIを導入。従来の硬直的な自動応答を超え、より人間らしい対話で問題解決を支援します。
また、数千人の店舗スタッフには「Gemini Enterprise」を展開し、業務ワークフローを自動化。スタッフが戦略的な業務に集中できる環境を整備しています。
EC事業者への影響と活用法
Home Depotの取り組みは、EC事業者に重要な示唆を与えます。
AI体験の設計思想を変える
これまでのECサイトにおけるAI活用は、商品検索の改善やレコメンドエンジンが中心でした。しかし、エージェンティックAIは「顧客の目的達成」を直接支援します。商品を売ることではなく、顧客の課題解決を支援することで、結果的に購買につながるという発想の転換が求められます。
オムニチャネル統合の深化
Magic Apronは、オンラインとオフラインの境界を曖昧にします。自宅で計画を立て、店舗でリアルタイムの案内を受け、配送まで一貫したAI体験を提供。EC事業者も、実店舗との連携においてAIをどう活用するか検討すべきでしょう。
プロ顧客向けB2B機能の強化
材料リスト生成機能は、B2B EC事業者にとって参考になる事例です。業務効率化ツールを提供することで、プロ顧客のロイヤルティを高める戦略は、他業種でも応用可能です。
まとめ
Home DepotとGoogle Cloudのパートナーシップは、小売業におけるAI活用の新たな基準を示しています。エージェンティックAIにより、顧客は「情報を探す」段階から「プロジェクトを完了する」段階まで、シームレスなサポートを受けられるようになります。
注目すべきは、今後数か月以内に「Google検索のAIモード」やGeminiアプリとの連携が予定されている点です。Home Depot自身のプラットフォームを超えて、Googleのエコシステム全体でエージェンティックショッピング体験が展開される可能性があります。
EC事業者にとって、この動きは単なる技術トレンドではなく、顧客体験設計の根本的な見直しを迫るものです。自社の顧客が本当に達成したい「目的」は何か、そしてAIがどのようにその達成を支援できるかを考える良い機会といえるでしょう。
関連記事

Google Cloudが提唱する「見えない棚」戦略、AIエージェント時代に消費財メーカーが選ばれる方法
Google Cloudがエージェンティックコマース時代の「見えない棚」戦略を提唱。従来の「棚に並べる」から「AIエージェントに選ばれる」へのパラダイムシフトを解説。

エージェンティックコマースとは?AIが購買を代行する新時代を解説
エージェンティックコマースの全貌を解説。AIエージェントがユーザーに代わって商品選定から決済までを自律的に実行。AI経由トラフィック4,700%増、ウォルマートの20%がChatGPT経由という衝撃のデータと共に、企業が今すぐ始めるべき3つの準備ステップを紹介します。

GoogleがUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表、エージェンティックコマースの標準化に向けた大規模連合
GoogleがNRF 2026でオープン標準「UCP」を発表。Shopify・Walmart含む20社以上が参加し、AIエージェントによるショッピング体験を標準化。

